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築40年RC造屋上防水改修工事:X-2メッシュ工法による職人技(前編)

By 2024年12月18日防水担当の日誌

築40年の鉄筋コンクリート(RC)造の屋上防水改修工事の様子を、写真と共にご紹介いたします。

今回の現場は、過去に他社様が施工された箇所と、お客様がご自身で補修を試みた箇所が混在しており、防水層の劣化が著しい状態でした。お客様のご要望に応え、確実な防水性能を取り戻すべく、X-2メッシュ工法を採用し、職人一同、精魂込めて施工にあたりました。

現地調査と既存防水層の状況

①現調 

まず、現状の確認からスタートです。向かって奥側は2年前に他社様が施工された箇所ですが、手前側は防水層が各所で破断し、お客様がDIYで補修を試みられた形跡がありました。

しかし、ご自身での施工には限界があると感じられ、今回、相見積もりを経て弊社にご依頼いただきました。

既存の防水層は、複数の異素材が積層されており、それぞれの素材の伸縮率の違いによるムーブメントが不具合の大きな原因となっていることが見て取れます。この状況を踏まえ、既存の不良箇所は徹底的に撤去することに決定しました。

②既存不良部切開 

既存の不良箇所を徹底的に撤去していきます。積層に積層を重ねた状態、そして異素材の重ね合わせは、防水層のムーブメントを阻害し、破断や剥離を引き起こす大きな原因となります

特に、築年数が経過した建物では、下地のコンクリートの動きやひび割れも考慮する必要があり、既存の防水層との相性を考えた適切な処理が重要です。この工程では、カッターやスクレーパーなどの工具を使用し、劣化した防水層を丁寧に剥がしていきます。この下地処理の丁寧さが、新しい防水層の性能を最大限に引き出すための重要なポイントです。

③既存不良部 埋め戻し 

既存の防水層を撤去した後は、切開部をカチオン系樹脂モルタルで平滑に処理します。

カチオン系樹脂モルタルは、下地との接着性が高く、強度や耐久性にも優れています。この工程は、新しい防水層を均一に施工するための下地を整える上で非常に重要です。凹凸があると、防水層の厚みが不均一になり、早期の劣化や漏水の原因となる可能性があります。モルタルを丁寧に塗り付け、コテで均一に均すことで、平滑で美しい下地を作ります。

④手摺:穿孔 

手摺の内部にも防水材を注入するため、早い段階で穿孔を行います。

キリコ(穴あけの際に発生する削りカス)の問題を考慮し、このタイミングで穴を開けることで、後の工程での清掃作業を軽減します。手摺の貫通部は、雨水の侵入口となりやすい箇所であるため、防水処理が不可欠です。

⑤グラウト注入 

手摺内部に無収縮モルタルを注入し、雨水の侵入を防ぎます。

無収縮モルタルは、硬化時の収縮が少ないため、隙間なく充填することができ、高い防水効果を発揮します。また、グラウト注入後、施工済みの部分にもモルタルが付着しているので、養生と清掃を徹底し、仕上がりを美しく保つように心がけています。

⑤グラウト注入後 

グラウト注入後、仕上がっている部分にも施工したので養生、清掃はキチンと心がけました。

⑥高圧洗浄 

漏水のリスクを最小限にするため、このタイミングで高圧洗浄を行います。

高圧洗浄は、下地の汚れやホコリ、カビなどを除去し、防水材の接着性を高めるために重要な工程です

洗浄後、下地が十分に乾燥していることを確認してから、次の工程に進みます。洗浄不足は、防水層の剥離の原因となるため、隅々まで丁寧に洗浄します。

⑦プライマー塗布 

下地がウレタン防水なので、プライマーには層間プライマーを選択しました

層間プライマーは、既存の防水層と新しい防水層との接着性を高めるために使用されます。

下地との相性を考慮した適切なプライマーの選定は、防水工事の成否を左右する重要な要素です。プライマーを丁寧に塗布することで、防水層の密着性が向上し、長期にわたり防水性能を維持することができます。

⑧緩衝シート 

今回の工事の要となるのが、この通気緩衝シートです。相見積もりの際に、他社様からは様々なご意見を頂きましたが、この既存状況からは、通気緩衝シートの採用は絶対に譲れませんでした。

通気緩衝シートは、下地からの水蒸気を逃がし、防水層の膨れを防ぐ効果があります。特に、既存防水層の上に新しい防水層を重ねる場合は、下地からの水蒸気による膨れが起こりやすいため、通気緩衝シートの設置は非常に重要です。

DIYで補修されたブチルゴムも、この工法によって不具合を防止できます。この意思表示が、2年前の他社施工のやり直しをさせていただくというご縁に繋がりました。

⑨緩衝シート:シート貼後、ジョイントテープ貼 

緩衝シートを貼り付けた後、ジョイントテープを貼り、通気層を完成させます。

ジョイントテープは、緩衝シート同士の隙間を塞ぎ、シートのズレや剥がれを防ぐ役割があります。この作業を丁寧に行うことで、防水層全体の通気性を確保し、耐久性の高い防水層を構築することができます。

⑩ウレタン一層目 

ウレタン防水材を1層目を塗布します。ローラーと金鏝を使い、均一な厚さになるように丁寧に塗布していきます

ウレタン防水材は、柔軟性と伸縮性に優れており、建物の動きに追従しやすく、ひび割れしにくいという特徴があります。また、防水性にも優れており、雨水の侵入を長期間にわたり防ぎます。

⑪脱気筒 

脱気筒を取り付けます。脱気筒は、防水層内部に発生した水蒸気を外部に排出する役割を担います

カタログ上では、ウレタン一層目の塗布前に設置することが推奨されていますが、今回の現場では、前日の人員配置や天候状況を考慮し、このタイミングで設置しました。現場の状況に応じて最適な手順を選択することが、良い結果に繋がります。

⑫ウレタン二層目 

ウレタン防水材の2層目を塗布します。1層目と同様に、金鏝を使って均一な厚さになるように丁寧に塗布します。

2層にすることで、防水層の厚みを確保し、より高い防水性能を実現します。また、重ね塗りをすることで、防水層のピンホール(小さな穴)を防ぐ効果もあります。

⑬トップコート塗布 

最後に、トップコートを塗布します。トップコートは、ウレタン防水層を紫外線や風雨から保護し、耐久性を向上させる役割があります

9インチのローラーと長柄を使い、立ち上がり部分をスモールローラーで丁寧に塗布します。トップコートを塗布することで、防水層の美観を保ち、長期にわたり保護することができます。

ここまでは、屋上防水工事におけるウレタン防水の基礎知識、工程、注意点について解説しました。

高圧洗浄や下地処理の重要性、そしてウレタン塗膜防水の様々な工法について見てきました。

特に、ALCパネルを使用する際の注意点や、防水層の維持管理についても触れました。次回は、より具体的な事例を交えながら、実際の補修・改修工事に焦点を当てていきます。特に、雨漏りの原因や対策、そして安全対策についても深く掘り下げていきます。

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