目次
今回は、前回ブログでご紹介した工事の続きをご紹介します。
引き続き、屋上防水工事についてです。
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こちらのマンションでは、以前に屋上の半分だけ塗装職人で防水工事をしていたのですが、他社が工事したもう半分の防水工事部分にトラブルが起き、本来であれば10年は持つはずの屋上防水が4年で雨漏りが起こる事態になっていました。
そこでオーナー様は、トラブルの起こっていない屋上防水工事を担当した弊社にお声がけくださったのです。
それでは、工事内容を詳しくご覧ください。
排水口の勾配修正と新規改修ドレンの設置工事
前回のブログでは、屋上の床部分に水たまりができ、排水ができずにいたため、その水が切れた防水層から床下へ染み出し雨漏りとなっていました。
防水層の切れている部分を見たところ、床スラブにもクラックが入っています。
そこで床の補修工事と、水たまりができないように排水口に水が集まるように細工する工事が必要だと分かりました。
まずは、排水口の工事です。
こちらには前回の工事で、新しく改修ドレンが取り付けられていました。
オーナー様としては、「改修ドレンがまだ新しいので、これを再利用してほしい」というご希望があったのですが、今回の工事の目的は床面にたまる水を排水させるために、排水口部分を床より一段低くすることです。
今のままの改修ドレンを使用すると、排水口の位置に変化はありません。
そのため、以前取り付けた改修ドレンを取り外して、排水口の周りを掘り下げて再度取り付ける必要があるのです。
また取り外した改修ドレンは再度使用することができないため、新しい改修ドレンが必要となります。
オーナー様に状況と理由をご説明させて頂いたところ、新規で改修ドレンを設置することとなりました。
こちらの写真では、排水口の周りは座彫りして床面よりも一段高さを下げ新しい改修ドレンを設置したところです。さらに、床面は排水口に水を導くために床面の防水層を切って、溝を作りました。
そして勾配修正を兼ねながら、新規改修ドレンを設置し排水口周りの工事は終了です。
関連動画 屋上の防水工事を一から 大雨の中の防水工事、雨漏りしないメカニズムとは?
床面の補強と床防水工事
排水口の工事が終わったら、次は切れている床面の補修工事です。
まずは、通気層シートを床面に敷き詰めました。
床の防水層が切れてしまっていたので、ただ切れた部分に防水材を撒くのではなく、切れた部分を覆うように1枚通気層をかませます。
例えるなら、床全体に絆創膏をあてるような感じです。
この上に防水材を撒くことで、床面の補強(緩衝)ができます。
次にパラペットの立ち上がり部分の顎(壁面と笠木のぶつかる部分)が深いので、補強シートの張り付けを行う際、重ねを多くとりました。
このシートは、ガラスクロスや補強布と呼ばれるものなのですが、切れないようにする目的と、塗料の厚みを測るゲージの役割をします。
なぜゲージの役割をするのかというと、この補強布の網目が消えるように塗装することで、塗料の厚みを確保できるからです。
床面全体に補強工事を施したら、いよいよ1回目の防水材を撒きます。
写真をご覧いただくとわかるのですが、この工事では写真左端にある架台を塗っていません。
この架台は塗りがしっかりとしていたため塗る必要がありませんでした。
そこで、少しでも工事費用を抑えるために、今回は塗装をしないことにしたのです。
最後に床面全体にトップコートを塗ります。
顎下の深さが今回20センチあるので、顎下から塗装をします。
通常塗装は上から行うのですが、笠木部分から塗ってしまうと、この顎下に垂れてしまうため、顎が深いときは顎下から塗装をするのです。
そして笠木を塗り、ここでは6インチのローラーを使います。
パラペットの立ち上がりの塗装が終わったら、最後に床面です。
さらに幅の広い7インチのローラーを使って塗装します。
溝なども綺麗に塗ることができ、これで屋上の防水工事は完了です。
ここまでは、屋上防水の補修、補強、防水工事についてご説明いたしました。
床面に水たまりができやすくなっていたのを、勾配修正をかけ排水口へ導くために、工事をいろいろと工夫をしたのです。
床面に関しても、補修布をパラペットの立ち上がり部分に張り込んでから防水材を塗布し、床面には通気層を敷き補強後に防水材を撒きました。
この工事ですが、他社が行った前回の防水工事が4年持たなかったために、再工事をしたのですが、これは本当にもったいないことです。
対応年数分持つ工事を業者にしてもらうためには、どのような選び方をしたらいいのか、詳しくご説明致します。
業者を比べる時に工事内容を見ることの大切さ
今回の床防水工事は、お客様にとって痛い出費だったと思います。
本来であれば、10年持つはずの防水材の効果が持たなかったのですから……。
それでも、今回こうして補修工事ができたことは、不幸中の幸いでした。(状態がひどいと補修工事ができない場合もあります)
たまに、弊社にお見積もり依頼されるお客様で、工事費用の値段が他社より高かったことが理由で、契約に至らないことがあります。
もちろん値段が合わないということで、お断りになるのは仕方のないことです。
しかし、たまにお断りされたお客様から再度ご依頼を受けて、他の業者が行った工事の状況を見る時があります。
すると、やはり安い工事には安いなりのわけがあり、本来であれば10年持つはずの塗装がひどい状態になり、お客様が助けを求めて弊社に駆け込まれるのです。
関連動画 ウレタン防水のビフォーアフター
またこれもよくあることなのですが、2社に外壁塗装という項目で見積もり依頼をし、工事内容の詳細を詰めない状態で、「どのくらい安くできますか?」と値段だけを交渉される方がいらっしゃいます。
そして提出された見積書を見て、一番安い塗装業者に依頼される…。
しかし、この比べ方では塗装工事の内容を比べていることにはなりません。
なぜなら、一口に塗装工事といっても、工事の中身が業者によって全く違うからです。
塗装工事は同じ工程を見積もりに提示しているとしても、工事内容は全く違います。
多くのお客様は、同じ塗料を使って3回塗りをすれば、どんな業者が工事をしたとしても塗装工事の仕上がりが同じになると思っていらっしゃるでしょう。
しかし、同じ塗料、同じ工法を使ったとしても新人とベテランでは塗る技量が違うため、新人が塗ったものは塗り残しや塗りムラがあり、そこから雨漏りに繋がってしまうことも。それに比べ、ベテランが塗ったものは塗りムラは無く膜厚も均一なため、塗装の持ち方に差がでるのです。
同じ商品を使っても、誰がやるかによって大きく結果が変わるのが、塗装工事です。
塗装工事の出来を左右するのは「人」
塗装工事は、関わる「人」が重要です。
例えば、工事に携わる職人の現場経験が浅さから、外壁のコンディションに合わない塗料を使ってしまうことがあります。
ネットなどで良いとされる塗料は、どの家でも塗れるわけではありません。
このお宅にはAという塗料を使って3回塗りしたことで、効果があったけど、その隣のお宅の外壁にはAという塗料を使って3回塗りしたものの効果が出ない…という場合があるのです。
塗装する前に、お客様の外壁に塗料が適しているかどうかを判断するのは、駆け出しの職人にはできません。営業の人間も実際の工事をしている人間はほとんどいないため、判断できないでしょう。
つまり、家に合った塗料が使えるかどうかを判断できるのは、現場で多くの経験を積んだ職人だけなのです。
ベテランの職人であれば、お客様宅の外壁の癖を把握し、さらに塗料を塗ったことでどのような状態になるか将来を見越した上で、塗料や工法を決めることができます。
しかし、ただ言われた塗料を言われたように塗るだけの職人では、判断も決断もできません。
当たり前のことですが、ロボットが握った寿司と、一人3万円もするカウンターの寿司職人が握る寿司では、技も味もまったく違うものです。
塗装の職人もそれと同じで…同じ塗料、同じ工法だとしても、人で大きく結果が変わります。
だからこそ、他社と比べる際には、「塗装工事」と工事の内容をおおざっぱにひとくくりにせず、工事の詳細を聞いて下さい、補修方法を聞いて下さい、なぜここにこの塗料を使うのか聞いて下さい。
僕は職人を引退して営業となりましたが、今でも現場を大切にして、あらゆる工事のご質問についてお答えするため日々研鑽を積んでいます。
質問があった際に、すぐにお答えるようにしたいからです。
塗装職人が持てる技術を総て注いで、お客様の家を10年後まで持たせるためにはどうしたらいいのか。毎日ご依頼頂いた家の状態を見ながら頭を悩ませています。
高い費用のなかで、どうやったら必要最低限の高い費用になるのか…。
もちろん潤沢に資金のあるお客様であれば、家を最大限に守りながら塗装するために、最高の工事方法、最高の職人を揃えて工事することができるでしょう。
しかし、弊社にお見積もり頂くお客様の中には、そこまで費用をかけられないお客様も多くいらっしゃいます。
だからこそ、お客様が出せる費用の中で、どこにお金をかけてどこを後に回したら、少しでも値段の安い工法を使うなどして工事ができるか、僕は考えます。
余計なところにお金をかけず、かけるべきところにかけることが、塗装工事には必要です。
塗装工事は、誰がやって、誰が見るか。
工事をする人間も技術を持った人です。
そして工事を判断しチェックするのも、技術を持った人間が必要です。
関連記事 業者の工事品質が分かる 塗装防水工事の仕上げ検査
安い工事を選んで二度手間にならぬように
屋上防水工事の話から大きく話が反れましたが、業者を比べる時に「値段と塗装工事の簡単な工程では比べることができない」ということが伝わりましたら幸いです。
今回の屋上防水工事も、排水口に水を確実に流すために座彫りをして溝を作る工事は、ほとんどの業者ではしません。
これをするためには、工事を発想するのと同時に、切った防水層をきっちりとカバーし補修できる技量が必要となります。
数ミリでも補修がずれたら、逆にこの防水層を切ったところから雨漏りすることになるでしょう。
職人の真面目さと正確さ、丁寧さが必要な工事となります。
相見積もりを取る際には、工事のおおまかな工程だけでなく細かい内容まで注目してください。
僕が見積もりを考える時は、いつもここが自分の家だったらと考えます。
最高の工事をするために、是非わからないことはご質問下さい。
お客様の家に合った工事を、ご提案させて頂きます。