前編では、防水工事の基盤を作るための「下地処理の重要性」について詳しく解説しました。既存防水層の撤去、伸縮目地の補修、ドレンの清掃と再設置、通気緩衝シートの設置を行い、後半のウレタン防水材の塗布工程に進む準備が整いました。
後編では、防水層の性能を最大限に発揮するための仕上げ工程を詳しく説明します。特に、ウレタン防水塗膜の厚さを均一に仕上げることや、紫外線や風雨から保護するトップコートの塗布が重要です。これらの工程では、職人の経験と技術力が防水性能に直結します。
関連記事
⑧ 脱気筒の設置
防水層内部に溜まる湿気を外部に逃がすために、脱気筒を設置します。
これにより、防水層の膨れを防ぎ、耐久性を高めることができます。脱気筒は、約25~100㎡ごとに配置するのが基本で、屋上の構造や下地の乾燥状態に応じて増設が必要になる場合もあります。
設置の際には、脱気筒をアンカーで固定し、その周囲を補強クロスでしっかりと補強します。
防水層の膨れは、湿気が閉じ込められることが主な原因であるため、脱気筒が機能することは非常に重要です。
⑨ 立ち上がり部分の補強(メッシュ貼り)
次に、防水層の立ち上がり部分に補強クロス(メッシュ)を貼り付けます。
立ち上がり部分は防水層が破断しやすい箇所であるため、補強を入れることで耐久性が向上します。
立ち上がり部の防水層は、水の侵入を防ぐために250mm以上の高さを確保するのが一般的です。
また、構造スリットなどの動きが発生しやすい部分については、防水層が直接影響を受けないように取り合いの工夫が必要です。
⑩ 平場ウレタン塗布(1層目)
ウレタン防水塗膜の1層目を塗布します。
この工程では、くしゴテを使用して防水材を均一な厚さに塗布します。
使用する道具によって塗膜の厚さが変わるため、必要な厚みに応じた道具を選ぶことが重要です。
ウレタン防水材は、主剤と硬化剤をしっかり混合する必要があります。
攪拌が不十分だと硬化不良を引き起こし、防水層の品質に影響を与えるため、専用の攪拌機を使い、メーカーの指定通りに施工します。
⑪ 平場ウレタン塗布(2層目)
続いて、2層目のウレタン塗布を行います。
2層目は1層目と同様の方法で塗布し、防水層全体の厚みを確保します。
ウレタン塗膜防水は、複雑な形状や細部にも対応できる柔軟性がある反面、均一な厚さに仕上げることが難しいため、職人の技術力が試される工程です。
2層塗布により、耐水性・耐久性が大幅に向上します。
また、ウレタン防水材の施工は気温や湿度の影響を受けやすいため、施工時の環境条件を考慮しながら作業を進めます。
⑫ トップコートの塗布
トップコートは、防水層を紫外線や風雨から守る「最後の仕上げ」となる重要な工程です。
今回は、耐候性に優れたアクリルウレタン系トップコートを使用しました。
このトップコートは5年程度の耐用年数を持ち、定期的に塗り替えることで防水層の長寿命化が図れます。
トップコートは、6インチローラーを使ってムラなく均一に塗布します。
コートの種類は、使用環境やお客様の要望に応じて選択が可能です。例えば、メンテナンス頻度を減らしたい場合には、耐久性が高いフッ素樹脂系トップコートを使用することもできます。
⑬ ドレンストレーナーの取り付け
ドレンストレーナーは、ドレン内部にゴミが詰まるのを防ぐための部材です。
今回は、突っ張り棒のような仕組みで内部で固定されるタイプを採用しました。
このストレーナーは、掃除がしやすく、詰まりにくい形状となっています。
排水機能を維持するためには、ドレン周りの定期的なメンテナンスが欠かせません。ストレーナーの形状や材質は、建物の環境や排水頻度に合わせて選ぶのがポイントです。
⑭ 脱気筒の仕上げ
最後に、脱気筒のカバーを取り付けて完了です。
脱気筒は、設置後も定期的に機能を確認し、異常があれば早めに対処することが推奨されます。
これにより、防水層の膨れや剥離のリスクをさらに減らすことができます。
関連動画
⑮ 施工後の確認と仕上がり
全ての工程が完了し、防水工事が無事に終了しました。
新しい防水層は、雨水から建物を守るための重要な役割を果たします。
今回の工事では、細部まで丁寧に作業を行うことで、高い品質を実現しました。
特に、伸縮目地の撤去や通気緩衝工法の採用、適切なウレタン防水塗膜の施工は、建物の防水性能を大きく向上させました。
これからは、定期的な点検とメンテナンスを行うことで、長期的な耐久性が確保できます。
今回の防水工事では、徹底した下地処理と適切な材料選定により、耐久性の高い防水層を施工しました。
特に、通気緩衝工法や脱気筒の設置、ウレタン防水塗膜の均一な仕上げがポイントでした。
また、トップコートやドレンストレーナーの選定・設置にも注意を払い、建物の長寿命化に貢献する施工を心がけました。
防水工事は、建物の健康を維持するために欠かせない重要な作業です。
今回のように、一つ一つの工程を丁寧に進めることで、お客様に安心を提供することができる防水工事を実現しました。今後も、さらなる技術力向上を目指し、安全で高品質な施工を続けてまいります。