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今回僕が担当したのは、オーナーが台湾人の方のビルです。
とても古いビルだったため、全体的に傷んでおり、スポットで直すにも気を遣う状態でした。
また、ビルの居住者様も国際色豊かで、言葉が通じないことなどもあり本当に苦労した現場です。
このブログでは、見積りについてどのようにやり取りをして、お客様の意向を汲んだのかご説明したいと思います。
現場調査でお客様と意見をすり合わせる大切さ
塗装職人の見積書は、他社と違い自動化されていません。
平米数や建物の面積、築年数を入力しただけでは、施工費用を算出できないのです。
業者によっては、平米数などの数値を入れるだけで、簡単に費用を算出するところもありますが、ほとんどの場合…工事半ばになって追加工事が出てきます。
家は、建っている環境や使い方などで出てくる不具合やトラブル、劣化の進行などが違うため、定型的な工事内容だけでは対応ができないのです。
その点、塗装職人の見積りはお客様に話しを伺い、必要なポイントを絞って建物を拝見し、よほどのことがない限り(見えない部分に大きな不具合があるなど)追加工事が出ないようにしています。
また、補修する箇所があるからといって、無理な営業はしません。
あくまでも、お客様のご希望される箇所の補修や塗装をします。
今回も、そんないつもの心持ちでお引き受けした工事でした。
しかし、いつも以上に難題の多い工事だったのです。
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イレギュラーだらけの見積りとは
お客様からご依頼があり、伺ったのは荒川区にあるテナントビルでした。
こちらのオーナー様は台湾の方で、お父様からビルを引き継ぎ管理していらっしゃるそうです。
とても古いビルだったため、オーナー様が気になる箇所を言われたまま補修しようとすると、大工事になってしまいます。
しかしオーナー様としては、費用は抑えたいという希望がありました。
そのために、するべき工事とできない工事の落としどころを見つけるのが非常に難しかったのです。
さらに、オーナー様は日本語が少し話せるものの、やはり細かいニュアンスになると言葉の壁があります。
そこで、いつも以上に補修箇所を丁寧に説明し、ご提案させて頂きました。
まずは、屋上の防水工事です。
以前防水工事を行ったそうなのですが、すでに防水の効果が切れて塗膜がはがれ、ローラーの軌跡がはっきりわかるほど劣化しています。
これは、かなり長い間放置しないと、ここまでローラーの跡が表面に出ることはありません。
また前回防水工事をする際に、本来であれば剥がすはずの異物を残したまま防水がしてあり、異物のふくらみや動きによって防水層が割れていました。
今回は、きちんと下地処理をして防水工事をする予定です。
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屋上の腰壁、そして笠木も塗装します。
さらに、この屋上にはエレベーターの機械室があり、内階段と一体になっているタイプでした。
エレベーター機械室の上には高架水槽が置かれ、鉄柵で囲ってあります。
この機械室の屋根部分を『塔屋』と呼ぶのですが、今回はこの塔屋も防水工事をします。
そしてエレベーター機械室の中、ドア面とタラップのある壁面、屋上の腰壁は塗装工事をし、内階段も塗装予定です。
内階段の鉄柵、内階段の窓枠に埋め込まれたH鋼、共用部と屋上を繋ぐドア面、さらに塔屋に登るためのタラップなどの鉄部も塗装します。
実はこのエレベーター機械室の壁には、錆汁が多く付着していましたが、錆を取る工程を入れると足場の設置が必要となるため、見積もりに入れられませんでした。
そこで、少し対応を変えて補修塗装工事をすることになったのです。
今回、内階段部分の箇所によってはビルの外に建てる足場が必要な場所もありました。
しかし、建物の周りに点字ブロックや狭い路地があることなどから、足場を建てられるところも限られています。そのため、こちらも工夫が必要でした。
ちなみに、点字ブロックのある道路は、点字を回避して足場を建てるか、もしくは点字を移設させる必要があります。
そのため、通常の足場を建てる工事よりも費用がかかるのです。
今回、工事自体は大きなものではありませんが、細かな工事をたくさん行うので、段取りも複雑になっています。
以上説明しましたことを全て盛り込み、見積書を作成し、何度もご説明をしました。
言葉の壁などもありましたが、間に入って頂いた管理会社の方の助力もあり、無事お客様の承諾を頂くことができたのです。
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塗装職人の見積りは生きた見積りを作ること
今回のブログでは、珍しく工事についてではなく、見積りだけに照準を絞ってお話しさせて頂きました。
塗装職人の見積りが、どのようにしてお客様の意見を取り入れているのか、多くの方に知ってほしかったからです。
平米数によって、単価で算出する見積りを出す業者はいます。
塗装業者のHPなどでも、数値を入力するだけで料金が分かると謳っているのもあるほどです。
しかし、それは塗装工事ではあまり見積りとして意味を持ちません。
塗装職人の見積りは、建物の状態を判断し、建物が少しでも長持ちするために塗料をかけ合わせ、工事の方法を工夫して作ります。
自動算出を行う業者の見積りと比べれば、弊社の見積もりが高く見えることもあるでしょう。
そして、できる工事とできない工事に関しても率直にお伝えするため「他の会社はできると言ったのに、なんで塗装職人はできないと言うのだろう」と思う方もいるかもしれません。
理由は、できない工事をして、不具合や事故を起こしてしまっては、お客様にとっても職人にとっても安全で良い工事にならないからです。
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塗装職人は、生きた見積りを作るために現地調査とお客様との意思疎通を非常に大切にします。それが外国の方であっても、通じるまで丁寧にご説明いたします。
今回のように、困っている部分だけの見積りを立てることも可能ですので、何かありましたらご相談下さい。
お客様に寄り添う工事をいたします。
本年も、プロの目を持って見積もりや工事に携わりたいと思います。