機械固定工法による屋上防水工事の施工(前編)

目次

施工前に分かった問題点

今回の工事対象は、世田谷区にあるマンションの屋上防水工事です。施工前の屋上の状態を確認したところ、以下のような問題点がありました。

既存防水の仕様が不明瞭:

既存の防水層は非常に薄く、「ウレタン塗膜防水」または「簡易な塗料仕上げ」の可能性がありました。ただし、屋上には脱気筒が設置されていたため、防水仕様であることは間違いありません。しかし、明確な仕様がわからないため、新規防水工事では既存層を活かすのではなく、新たに防水層を構築する方針となりました。

亀甲状のひび割れ(下地不良):

既存防水層には「亀甲(きっこう)状」のひび割れが発生しており、防水層としての機能が失われていました。このような症状は、下地の劣化や施工不良が原因となることが多く、根本的な改善が必要でした。

防水層の浮きや剥がれ(下地不良):

亀甲状のひび割れに加え、防水層の浮きや剥がれが見られました。通常であれば、下地調整を行い、その上に新しい防水層を施工しますが、今回は「機械固定工法」を採用することで、下地の影響を最小限に抑える施工方法を選択しました。

「機械固定工法」とは、絶縁シート(ラジアルシート)を敷設し、その上から塩ビシートをディスクプレートで固定する防水工法です。接着剤を使わないため、下地の影響を受けにくく、既存防水の撤去や下地調整の手間を削減できます。

機械固定工法のメリット

  • 下地を選ばない:既存防水が不明でも施工可能
  • 施工が速い:接着剤不要で乾燥待ちが不要
  • 長寿命:メンテナンスしやすく、耐用年数が長い
  • 改修向け:既存防水を撤去せずに施工できるため、コスト削減につながる

施工前:既存防水の確認

施工前の調査を行い、既存の防水層が非常に薄いことを確認しました。下地が悪く、ひび割れが多発していたため、絶縁シートを使用することで下地の影響を受けずに施工する方針となりました。

笠木ウレタン塗膜防水施工

笠木部分(屋上の外周部)はウレタン塗膜防水で仕上げました。塩ビシートとは異なる防水仕様ですが、機械固定工法との相性を考え、適切な処理を施しました。

顎テープ 先行施工

機械固定工法では、立ち上がり部分に「顎テープ」と呼ばれるシートを先に貼ります。これは、雨水が防水層の端部に侵入しないようにするための重要な工程です。

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鋼板(後半)取付

ディスク固定の前に、屋上の端部に鋼板を設置しました。この鋼板がないと、塩ビシートを固定する際に端部処理ができないため、必須の工程です。

絶縁シート(ラジアルシート)敷設 → ディスク固定

絶縁シートを敷き込み、専用のディスクプレートを固定しました。ディスクの間隔は約30cmごとに配置し、強風などでシートが剥がれないように施工します。

鋼板取付

塩ビシートの固定用に鋼板を取り付けました。特にL型鋼板を使用し、端部処理をしやすい形状に整えています。

シート引き込み(テープ5cm重ね)

塩ビシートを敷き込み、5cmの重ね幅を確保しながら溶着液で仮固定しました。

シート敷き込み完了

シート全体を敷き込み、施工完了の状態を確認しました。

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端部のシート加工(溶着液)

シートの端部を加工し、溶着液を使用して防水性能を確保しました。

シート蹴り込み

シートを固定しながら、しわが発生しないように「蹴り込み」を行い、密着させました。

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まとめ

施工の前半では、以下の工程を完了しました。

  • 既存防水の確認と施工計画
  • 顎テープの先行施工による端部処理
  • 笠木のウレタン塗膜防水
  • 絶縁シート(ラジアルシート)の敷設とディスク固定
  • 鋼板(後半)の設置とシートの敷き込み

ここまでの作業で、防水層の基盤となるシートの敷設が完了しました。しかし、防水性能を確保するためには、ジョイント部や端部の処理が不可欠です。

次回は、施工の仕上げ工程について詳しく解説します。特に、ジョイント部の溶着・立ち上がり部分の防水処理・ドレンの施工など、シート防水の耐久性を左右する重要な作業が進められます。
また、溶着液・ライスター・エクシールといった専用資材の使い方や、防水層の仕上がりを左右するポイントについても詳しくお伝えします。

「機械固定工法がどのようにして高い防水性能を発揮するのか」、その秘密が明らかになります!

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