世田谷区のマンション屋上防水工事では、既存防水層の劣化が激しかったため、機械固定工法を採用しました。前編では、施工の基礎となる「絶縁シートの敷設」「ディスク固定」「塩ビシートの敷き込み」までの工程を詳しく解説しました。

しかし、シートを敷いただけでは防水効果は不十分です。ジョイント部・立ち上がり部・ドレン周りの処理をしっかり行わなければ、水の侵入リスクが残ってしまいます。そこで、後編では、防水層をより強固なものにするための仕上げ工程に焦点を当てていきます。
今回は、以下の施工工程を詳しく解説します。
- ジョイント部の溶着液施工と圧着処理
- 立ち上がり部分の防水処理
- シート端部のシール施工と防水補強
- 入隅部やドレン周りの処理とその重要性
- 最終チェックと施工完了の確認
この仕上げ作業を丁寧に行うことで、長期間にわたって雨水の侵入を防ぐ、強固な防水層が完成します。施工のプロがどのように細かい部分までこだわって防水処理を行っているのか、その全貌を詳しくご紹介します。
シートジョイント部 溶着液施工(押え・圧着)
塩ビシート防水では、ジョイント(シートの継ぎ目)の処理が最も重要です。なぜなら、シートを敷設しただけでは隙間があり、そこから水が侵入するリスクがあるためです。そこで、ジョイント部には専用の溶着液を使用し、強固に接着します。

施工方法:
- ジョイント部の清掃
- シートの重ね部分に汚れや水分があると、接着不良を起こすため、ウエスで拭き取り、清潔な状態にする。
- 特に、埃や油分があると溶着がうまくいかないため、溶剤拭き(専用のクリーナーで拭き取る)を行うこともある。
- 溶着液を塗布
- 溶着液は専用のボトルに刷毛がついており、それを使ってジョイント部に適量を塗布する。
- 塗布後、すぐに溶剤が反応して塩ビシート同士が溶ける仕組みになっている。
- ポイント:溶着液は揮発性が高く、塗ってすぐに圧着しないと十分な接着が得られない。そのため、塗布と圧着を連携して素早く行うことが重要。
- 押え・圧着
- 溶着液を塗布した後、低圧ローラーでしっかりと押え、シート同士を圧着する。
- ローラーを均一な力で転がすことで、接着ムラを防ぐ。
- 端部は特に丁寧に圧着しないと、剥がれやすくなるため、追加でローラーをかける。
シートジョイント⽴上り端部:溶着液施工
立ち上がり部分(壁との取り合い部)は、シートが垂直に貼られるため、床面と比べて接着が難しいです。ここでも溶着液を使ってシートを密着させます。

施工手順:
- ジョイント部を清掃(埃やゴミがあると接着不良になるため)
- 溶着液を塗布し、低圧ローラーで圧着
- シートが剥がれないように、端部に追加で圧着処理
立ち上がり部分は風の影響を受けやすいため、しっかり圧着することが重要です。端部は特に隙間ができやすいので、念入りに施工します。
IH融着
シートの一部をIH(誘導加熱)で溶着し、確実に接合しました。

シート端部 液シール
シートの端部(シートが途切れる箇所)は、雨水が侵入しやすいポイントのため、液シールを塗布して防水処理を行います。使用するのはエクシール(塩ビ専用のシーリング材)、柔軟性がありシートの動きにも追従できます。

施工手順:
- 端部を清掃し、プライマーを塗布(密着力を向上させるため)
- エクシールを充填(シートと下地の間にしっかり流し込む)
- ヘラで押え均等にならす(表面にムラが出ないようにする)
端部処理が不十分だと、シートの端から水が侵入し、防水層全体の耐久性が低下するため、慎重に作業します。
シート入隅部 ライスター施工
屋上には「入隅(いりすみ)」と呼ばれる床と立ち上がりが接する角の部分があり、ここは防水上の弱点になりやすいです。そのため、ライスター(熱風溶着機)を使って、確実にシートを接着します。

施工手順:
- 入隅部のシートをしっかり圧着し、仮固定
- ライスターを使い、シートを熱で溶かしながら接着
- ローラーで圧着し、隙間をなくす
入隅部は水が溜まりやすい場所なので、溶着が甘いとすぐに防水不良につながります。
ドレン施工

施工手順:
- ドレン周りの清掃(ゴミや砂が残っていると接着不良の原因になる)
- 専用のドレンシートを敷き、ライスターで溶着
- 周囲にエクシールを塗布し、完全に密閉
水の流れを妨げないように、シートの重ね方を工夫することが重要です。
シートジョイント部 溶着液施工後
シートの継ぎ目に隙間がないことを確認し、溶着液がしっかりと浸透していることを確認します。必要なら追加で溶着液を塗布し、再度圧着します。

施工後のチェック:
- 溶着液によってシートがしっかりと接着されたかを確認する。
- 浮きや隙間がないかを目視でチェックし、ローラーをかけ直す。
- 施工後のテストとして、軽く引っ張っても剥がれないか確認することもある。
各シート端部 液シール施工
ここまでの施工で、シートの固定と溶着は完了しているが、最終的な仕上げとして「液シール処理」を行います。端部と同じように、端部の処理を再確認しエクシールを追加で充填します。

顎下プライマー塗布
端部の仕上げ前にプライマーを塗布し、密着性を向上させました。

顎下シール施工
端部の仕上げとして、シール処理を施しました。

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臭気筒(排気口)周りのシートをライスター(熱風溶着機)で溶着し、防水処理を行いました。

施工後
最終確認を行い、施工が完了しました。施工後の写真を撮影し、問題がないことを確認しました。
今回の工事では、機械固定工法の「下地を選ばず施工できる」「改修が容易」「耐久性が高い」といったメリットを最大限に活かしました。特に、ディスク固定による強固なシート保持と、溶着液・ライスターを用いた確実なジョイント処理によって、高品質な防水層を形成しました。

施工のポイント:
- シートの重ね幅(5cm)を守る
- 溶着液を適切に使用し、ムラなく圧着する
- 端部処理を丁寧に行い、水の侵入経路を作らない
- 排水ドレン周りの処理を慎重に行い、排水性能を確保する
上記の点が、耐久性の高い防水施工につながることを改めて確認しました。
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まとめ:施工完了後のメンテナンスと今後の管理
機械固定工法は、定期的な点検とメンテナンスを行うことで、長期にわたって防水性能を維持できます。施工後は、以下のポイントに注意しながら維持管理を行うことが推奨されます。
- 排水ドレンの詰まりを定期的にチェックする
- シートの端部やジョイント部の剥がれがないか確認する
- 必要に応じてトップコートやシール材を補修する
今回の工事によって、屋上は、耐久性の高い防水層に生まれ変わりました。これにより、今後長期間にわたって雨漏りの心配がなく、安全な建物環境が維持が期待できます。