施工の見どころ


調査
世田谷区にある築30年のマンションのオーナー様より、大規模改修工事のご依頼をいただきました。今回の工事では、外壁と付帯部分の塗装に加え、バルコニーや屋上、廊下・階段部分の防水工事も行うことになりました。
調査を進める中で、特に驚いたのは屋上の状態です。トップコートは長年にわたって塗り替えがされておらず、表面には剥がれや黒ずみが目立っていました。また、外壁にも多数のクラックが確認され、長期間にわたり十分なメンテナンスが行われていなかったことがうかがえます。
屋上は既存のウレタン防水でしたが、劣化が進んでおり、このまま放置すれば雨漏りの原因になる恐れがあります。防水機能の低下は、建物内部への浸水や構造体の劣化にもつながりかねません。こうしたリスクを未然に防ぐためにも、定期的な点検と適切な改修工事の重要性が改めて感じられる現場でした。

下地
今回は下地の劣化が非常に進行していたため、通常よりも時間と手間をかけて、丁寧に下地処理を行いました。まず、スクレーパーやワイヤーブラシを用いて、古くなった塗膜やこびりついた汚れ、サビなどをしっかりと除去。劣化が激しい箇所は特に入念にケレン作業を行い、下地の表面をできる限り滑らかに整えました。
その後、高圧洗浄機で細かい粉塵や浮いた汚れを一掃し、仕上げにほうきを使って残ったゴミを丁寧に清掃しました。防水材の密着性を高めるためにも、こうした細かな作業の積み重ねが非常に重要です。今回は通常よりも一段階踏み込んだ処理を行ったことで、より良い施工精度が期待できます。

下地処理が完了したら、次にプライマーの塗布です。使用したのは「サラセーヌP-60層間プライマー」。このプライマーは、既存のウレタン防水層との密着性に優れており、改修工事に最適な製品です。また、施工後の防水層が長期間安定することが期待できるため、安心して次の工程に進むことができます。

入隅の処理
入隅(いりすみ)とは、二つの壁が内側に向かって接することでできる角の部分を指します。この入隅は、防水工事の中でも特に雨水が溜まりやすく、劣化や漏水のリスクが高いため、十分な対策が求められます。
今回は、ウレタン系のシーリング材を使用して「三角シール工法」を施工しました。三角シールとは、入隅部分にシーリング材を充填し、ヘラで三角形の形に成形する方法です。この三角形の形状にすることで、シーリング材の厚みと幅を適切に確保でき、伸縮や揺れによるひび割れを防ぎやすくなります。

ウレタン塗布
ウレタン防水の1層目を塗布する際は、防水層の厚みが均一になるよう、丁寧に施工することが非常に重要です。厚みにムラがあると、期待される防水性能を十分に発揮できず、漏水などのリスクが高まります。

また、塗布前には材料を十分に撹拌し、成分が均一になるようにしておきましょう。ウレタン防水材は気温や湿度の影響を受けやすいため、施工環境にも注意が必要です。

ウレタン2層目を塗布する際は、1層目との密着性を確認しながら、重ね塗りを慎重に進めます。しっかりと密着していない状態で塗布を進めると、層間剥離の原因となり、防水性能や耐久性が大きく損なわれる可能性があります。

2層目を施工することで、防水層の十分な厚みが確保され、耐久性や防水性能がさらに向上します。

ウレタン防水材は製品ごとに硬化時間や耐候性、施工性などの性能が異なるため、建物の条件や施工環境に応じて、最適な製品を選定することが大事です。
トップコート塗布
トップコートは、防水層を紫外線や風雨から守るために欠かせない仕上げ材です。劣化を防ぐことで、防水性能を長く維持する重要な役割を果たします。
今回使用したのは、耐候性に優れた「サラセーヌT」というトップコートです。

サラセーヌTは、厳しい屋外環境でも長期間にわたって防水層を保護できるのが特長です。また、より高い耐久性を求める場合には、さらに優れた耐候性を持つ「Tフッ素シリーズ」も用意されています。一般的なアクリルウレタン系トップコートと比べて、サラセーヌTフッ素は紫外線や熱、雨風に対する耐性が大幅に向上しており、メンテナンスの頻度を減らすことが可能です。
施工後
防水層を紫外線や風雨から保護する役割を持つトップコートがしっかり施工されたことで、今後の雨漏りの心配もなく、マンションの居住者の皆さまには安心してお過ごしいただけます。
今回の工事では、美観だけでなく機能面の向上にも力を入れました。その一環として、排水ドレンの補強と塗装を実施しています。排水ドレンは、屋上に降った雨水を速やかに流すための重要な設備であり、その不具合は雨漏りの原因にもなりかねません。

そこで、既存のドレン部分にシール材でしっかりと補強を施し、さらに塗装を加えることで、排水機能の維持とともに見た目の美しさも高めました。見えにくい部分にも手を抜かない丁寧な施工が、長期的な建物の安心につながります。
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