江東区にあるオフィスビルの屋上防水改修工事の後編です。前回は通気緩衝工法によるウレタン塗膜防水の主な工程を進めました。既存の屋上防水層を撤去し、念入りな清掃と下地処理の後にプライマーを塗布しました。今回の工程は、細部の仕上げや最終確認を経て、屋上防水改修工事がいよいよ完成します。
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QVシート貼り ― 湿気と動きのコントロール
プライマー塗布後の「QVシート」の貼り付け工程。通気緩衝シートとも呼ばれ、公共事業では「X-1」と表記されることもあります。

このシートには以下のような効果があります。
- 防水層の膨れ防止:旧層の水分を脱気筒まで誘導し、湿気を逃します。
- 下地の動きの吸収:ひび割れの発生を抑制し、防水層へのダメージを緩和します。

これは、QVシートの継ぎ目に「QVテープ」を貼って隙間を塞ぎ、通気機能を妨げない工夫が施しているところです。
ガラスクロス貼り ― 強度と膜厚の確保
そして、ガラスクロス張りです。特に応力が集中しやすい立ち上がり、入隅、QVシート周辺の補強に使用します。

この補強クロスの目を埋めるように材料を塗布することにより適正な「膜厚」を確保する物差しにもなっています。

これは立ち上がり部に粘度の高いウレタン材を、ゴムベラなどで丁寧に塗布している様子です。
脱気筒の設置
脱気筒は防水層内部の湿気を屋外に逃がすための重要な設備です。QVシートの下を通ってきた湿気は、ここから排出されます。周囲もガラスクロスで丁寧に補強され、破断リスクを低減しています。

脱気筒まわりを補強をします。異なる素材が接する部分は破断リスクが高いため、クロスでの補強が不可欠です。
ウレタン塗膜防水の施工
いよいよメインとなるウレタン塗膜防水の塗布です。

1層目の「サラセーヌK材」をローラーと金ゴテで均一に塗布しています。

そして、ウレタン2層目を重ね塗りしています。
こうした複層施工により、耐久性と防水性能の高い膜を形成します。
トップコート塗布
仕上げとして、防水層を紫外線や大気汚染から守るトップコートを塗布します。

6インチローラーを使って丁寧に塗布しました。トップコートは、防水層の寿命を延ばし、見た目の美しさも維持する重要な仕上げです。
施工後・復旧

室外機下の施工のために「ウマ」と呼ばれる架台で室外機を持ち上げ、細部まで丁寧に施工しています。
関連動画 床に置いてある室外機の下はどうやって施工する?


脱気筒のカバーやストレーナーがしっかり取り付けられ、美しい仕上がりの屋上が確認できます。これで、このビルは今後も安心して使い続けられる状態となりました。
今回の屋上改修工事では、下地調整から仕上げに至るまで、すべての工程が丁寧に実施されていることが分かります。

屋上防水は建物を守る重要な要素。信頼できる技術と施工があってこそ、建物の寿命を延ばし、安心・快適な空間が維持できるのです。