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屋上既存塩ビシート防水をQV工法で改修(後編)

By 2024年12月6日12月 11th, 2024ウレタン, 屋上防水, 防水担当の日誌

築28年の鉄筋コンクリート造マンションの屋上防水工事では、既存の塩ビシート防水の劣化を補修し、ウレタン塗膜防水「サラセーヌQV-KK50Tフッ素工法」を採用しました。

前編では、工事の基礎となる高圧洗浄や下地調整、プライマー塗布、平場の通気層補修など、施工初期の重要な工程を詳細に解説しました。

また、ジョイントテープや捨て塗りを行い、防水層を一体化させる下地作りの様子も紹介しました。

後編では、さらに重要な階段庇や立ち上がり部分への施工工程、補強クロスの設置、ウレタン塗布の仕上げまでを詳しく解説します。

 

⑮ 階段庇 バックアップ材の設置

バックアップ材を設置することで、3面接着を防ぎ、シーリング材が柔軟に伸縮できる空間を確保します。

階段庇の土台部分では、漏水箇所に排水口(逃げ道)を設ける必要があり、わざと少し隙間を残した状態で施工を行いました。

バックアップ材はシーリング材の適切な厚みと形状を保つために重要な部材で、将来的な漏水リスクを未然に防ぎます。

今回の施工では、庇部分の下地と金属の接合部に特に注意を払い、確実な補修を行いました。

⑯ 階段庇 プライマー塗布

バックアップ材を設置した後、シーリング材の密着性を高めるためにプライマーを塗布します。

このプライマーは、庇部分の金属と下地が異素材であるため、それぞれに適した種類を使用しました。

金属部分には金属プライマー、下地部分には変成シリコン対応のプライマーを適用しています。

また、適切にプライマーを塗布することで、シーリング材の剥がれや劣化を防ぎ、長期間にわたる防水性能を確保します。

細かな部分でも手を抜かず、均一に塗布することで、全体の仕上がり精度を高めています。

⑰ 階段庇 シーリング材充填

プライマー塗布後、シーリング材を充填します。

階段庇部分は雨が直接当たる場所であり、漏水リスクが高いため、シーリング材を隙間なく充填することが求められます。

特にバックアップ材との接合部に空気が入り込まないよう、慎重に充填を進めます。

この工程では、防水層と下地がしっかり密着し、一体化することで耐久性を向上させます。

シーリング材の選定も重要で、変成シリコン材を使用することで、耐久性と柔軟性を兼ね備えた仕上がりを実現しています。

⑱ 階段庇 ヘラ押さえ

シーリング材を充填後、専用のヘラで押さえ込みを行います。

この作業は、シーリング材が均一に密着し、隙間なく接着されるために不可欠です。

ヘラ押さえにより、表面が滑らかになり、防水性能だけでなく美観性も向上します。

特に庇部分では雨水の流れを妨げないように、丁寧に作業を進めることが求められます。

この工程をしっかり行うことで、後の防水層施工がスムーズに進みます。

⑲ 階段庇枠 ヘラ押さえ(同工程)

庇枠部分もヘラ押さえを行い、シーリング材の密着性と仕上がりの均一性を確保します。

ヘラ押さえ後に余分なシーリング材を取り除き、後から人工的に排水口となる隙間を形成しました。

このように、適切な水の逃げ道を設けることで、漏水のリスクを防止します。

施工後には庇枠全体が一体化され、見た目にも美しい仕上がりとなっています。

㉑ 立ち上がり 補強クロス施工

立ち上がり部分には補強クロスを貼り付けます。

このクロスは、異種素材(例:金属とウレタン防水材)の接合部で切れや剥がれが発生するリスクを防ぐために不可欠な工程です。

クロスは、金属部分から立ち上がり部分を150mm以上重ねて貼り付け、金属プライマーで下地処理された面に強固に密着させます。

この工程により、異種素材間の弱点を補い、防水層全体の耐久性を向上させます。補強クロスは防水工事の「要」となる部分であり、施工の精度が防水性能を大きく左右します。

この補強クロスの施工は、異素材間の動き(収縮や膨張の違い)による防水層の破断を防ぐ効果もあります。

また、立ち上がり部分は漏水リスクが高い箇所のため、特に入念な作業が求められます。今回の施工では、金属部分や既存防水層、そして新設する防水層が一体化するよう、精密にクロスを施工しました。

㉒脱気筒 新設

脱気筒を新設します。この脱気筒は防水層の下に溜まった湿気や水分を排出する役割を持ちます。

新設時には、防水層全体の通気機能を維持するため、既存の防水層と新しい通気層を貫通させるように設置します。

これにより、下層に溜まった水分も効率よく排出され、内部結露や漏水リスクが軽減されます。

㉓脱気筒 クロス補強

新設した脱気筒周辺には、補強クロスを貼り付けます。

脱気筒周辺は異種素材の取り合い部分であるため、特に切れや剥がれが起こりやすい箇所です。

補強クロスを貼ることで防水層を強化し、長期間にわたる耐久性を確保します。

㉔立ち上がり ウレタン塗布1回目

立ち上がり部分にウレタン防水材の1回目を塗布します。

1回目の塗布では、補強クロスのメッシュ目が隠れる程度に均一に塗り付けます。

この目が基準となるため、適切な厚みを確認しながら塗布を進めます。

1回目をしっかりと塗ることで、防水層の土台を構築します。

㉕平場 ウレタン塗布1回目

平場部分にもウレタン防水材を塗布します。

ここでは、先に行った捨て塗りの上に防水材を重ね塗りし、均一な防水層を形成します。

縦横に丁寧に塗布し、下地との密着性を最大限高めます。

㉖立ち上がり ウレタン塗布2回目

立ち上がり部分にウレタン防水材の2回目を塗布します。

この工程では、1回目で隠しきれなかった部分をカバーし、均一な防水膜を作り上げます。

防水層の厚みを確保し、仕上がりの耐久性を高めます。

㉗平場 ウレタン塗布2回目

平場にもウレタン防水材の2回目を塗布します。

立ち上がり同様、1回目の塗布で作成した防水層をさらに強化し、隙間や薄い箇所がないように丁寧に仕上げます。

㉘立ち上がり トップコート

立ち上がり部分にトップコートを塗布します。

この最終仕上げにより、紫外線や摩耗に強い表面が形成され、防水層の耐久性が飛躍的に向上します。

㉙平場 トップコート

平場部分にトップコートを塗布します。

施工中の汚れや異物が混入しないように注意しながら、均一に仕上げます。

工事の最終工程として、美観性と耐久性を兼ね備えた防水層を完成させます。

㉜施工後 ガラスクリーニング

工事完了後、天窓や屋上のガラス面をクリーニングします。

防水工事中に付着した汚れを取り除き、工事箇所全体を清潔に保つことで、仕上がりの美観を向上させます。

総括:工事の意義と建物への影響

今回の防水工事は、築28年という経年劣化の影響を受けたマンションの屋上に対し、徹底した調査と補修を行ったうえで実施されました。

施工前には既存の防水層に通気層の断裂や脱気筒の機能不全が見られ、これが漏水や湿気の滞留を引き起こしていました。

しかし、適切な工程と最新のウレタン防水技術を用いることで、屋上全体の防水性能が再構築されました。

本工事のポイント

  1. 既存防水層の徹底補修: 問題箇所を特定し、通気層やジョイント部を補強。下地調整を行い、施工の信頼性を確保しました。
  2. 適材適所の材料選定: 環境条件に応じたプライマーやシーリング材を使用し、異種素材間の一体化を実現しました。
  3. 耐久性と美観の両立: サラセーヌQV-KK50Tフッ素工法により、防水層の高い耐久性と仕上がりの美しさを両立しました。

屋上防水層は建物全体の耐久性や住人の安心感に直結する重要な部分です。

この防水工事を通じて、建物の寿命が大幅に延びただけでなく、住人の生活環境が向上しました。

施工業者の技術力と経験が結集したこの工事は、マンションにとって大きな価値をもたらす結果となりました。

施工後も定期的な点検やメンテナンスを実施することで、今回構築した防水層の性能を維持し、さらなる長寿命化を図ることが可能です。

特に、脱気筒や立ち上がり部分などのポイントは劣化が進みやすいため、適切なタイミングで確認を行うことが重要です。

今回の施工工程を詳細に振り返ることで、防水工事が単なる「雨漏り対策」にとどまらず、建物の耐久性向上や美観維持に大きく貢献することを実感できます。

防水工事を検討されている方にとって、この記事が信頼できる判断材料となれば幸いです。