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ウレタン塗膜防水工事 築33年RC建物屋上を守る確かな施工プロセス(前編)

By 2024年12月12日防水担当の日誌

築33年の鉄筋コンクリート造(RC造)建物の屋上防水改修工事では、既存のシート防水層が経年劣化によって防水性能を失い、雨漏りのリスクが高まるケースが少なくありません。

本記事では、既存のゴムシート防水層を撤去し、ウレタン塗膜防水へと改修する全工程について詳しく解説します。

各工程には、建物の構造的特徴や既存防水層の性質を考慮した細かい作業が含まれています。

防水工事は外観だけでなく建物の寿命にも直結する重要な工事です。そのため、正確な施工手順や専門的な知識が欠かせません。

本記事を通じて、読者の皆様が防水工事のプロセスを深く理解し、防水層の重要性についてご理解いただけることを願っています。

①施工前:既存ゴムシートの確認

防水工事の第一歩は、現場の調査と診断です。この建物では、既存の防水層としてゴムシートが使用されていることを確認しました。

築33年のRC造建物では、経年劣化による防水層の剥離や接着不良が進行している可能性があります。

そのため、劣化箇所を詳細に目視確認し、防水機能が失われている範囲を正確に把握します。

ゴムシート防水では、シート自体の劣化だけでなく、接着剤やプライマーの劣化も見逃せません。

この段階で、改修方法を「部分補修」にするのか「総撤去」にするのかを検討します。

今回の現調では、防水層全体に広範囲の劣化が見られたため、総撤去が最適と判断されました。

また、下地コンクリートの状況も確認し、不具合があれば補修計画に盛り込む準備をします。これにより、後の工程がスムーズに進むよう基礎情報を収集します。

②施工前:室外機やアンテナ類の確認

シート防水は通常、施工後10~15年程度で性能が低下し始め、浮きや剥離、ひび割れが発生します。

本現場では築年数が33年に達しており、既存の防水層が寿命を迎えていることが分かります。

また、下地部分の状態も注意深く確認する必要があります。

既存防水層の撤去後に下地の調整を行うため、次工程への準備として劣化箇所やクラックの位置を記録しておくことが重要です。

この確認作業が防水改修工事の成功に直結します。

笠木撤去:旧防水端末の処理準備

防水工事では、旧防水層の端末部分を確実に処理するために、笠木(コーピング)を撤去する作業が欠かせません。

笠木とは、屋上の立上り部分の最上部を覆う金属やコンクリート製の仕上げ材であり、雨水の侵入を防ぐ役割を持っています。

しかし、笠木と防水層の接続部は雨水が浸入しやすいポイントでもあるため、旧防水層を改修する際には取り外しが必須です。

今回の現場では、笠木を撤去することで、防水端末部分の状態が明らかになり、固定具の「ステー」が露出しました。

このステー部分は劣化や錆が発生しやすく、事前に補修計画を立てる必要があります。また、撤去作業時には破損や屋根構造への影響が出ないよう、慎重に作業を進めます。

既存防水シート撤去:総撤去作業

既存のゴムシート防水層を全面的に撤去する作業です。

ゴムシート防水では、シートの接着剤やプライマーが劣化していることが多く、これが新規防水層との相性不良を引き起こすため、総撤去が選択されました。

撤去の際には、ゴムシートに短冊状の切り込みを入れ、手作業または専用工具で剥がします。

この際、赤く残るプライマーの痕跡や黄色い接着剤の残骸も丁寧に除去します。

これを怠ると、新規防水層の接着性が低下し、防水性能に悪影響を及ぼすため、特に慎重な作業が必要です。また、撤去中に下地コンクリートの状態を確認し、クラック(ひび割れ)や欠損が見つかった場合には、補修材を用いて適切に処置します。

既存ドレン撤去:新規ドレンの取り付け準備

排水口(ドレン)周辺の処理は、防水工事の要となる重要な工程です。

既存のドレンを撤去する際、周囲の粘着物や汚れを完全に除去する必要があります。

特に、ゴムシート防水では「ブチルテープ」という粘着材が使用されていることが多く、これが下地に強く付着しているため、専用工具で慎重に取り除きます。

ブチルテープを残したままだと、新規防水材との接着不良や排水機能の低下を引き起こします。

また、ドレン周辺は雨水が集中する箇所であり、不具合が発生しやすいポイントです。そのため、撤去後に配管内部の清掃も行い、排水性能が正常に機能することを確認します。

ケレン・清掃:施工面の整備

旧防水層を撤去した後の下地を、次工程に備えて清掃し整える工程です。

ケレン作業では、下地表面に残る汚れ、ゴミ、接着剤の痕跡を手作業または電動工具を使用して取り除きます。

これにより、下地表面が平滑になり、新規防水材の接着性が向上します。また、ブロアーを使用して粉塵や細かいゴミを吹き飛ばし、施工面をクリーンな状態に保ちます。この工程を適切に行わないと、防水層の剥離や密着不良が発生し、防水性能に悪影響を及ぼします。

特に、RC造建物ではコンクリート表面に汚染物が多いことがあり、十分な清掃が欠かせません。

⑦カチオン系樹脂モルタル塗布:下地調整

カチオン系樹脂モルタルは、防水工事において下地調整に欠かせない材料です。

旧防水層を撤去した後のコンクリート下地には、凹凸やクラック(ひび割れ)が発生していることが多く、これらを修正するために塗布します。

この材料は、下地表面を平滑にするだけでなく、旧防水層から残存する化学成分を遮断し、新規防水材との相性を改善する効果があります。

特にRC造建物の場合、コンクリートの吸水性やアルカリ成分が防水層に影響を与えるため、この工程が重要です。

作業は、まず凹凸が激しい箇所に補修材として塗布し、ヘラや金ゴテで均一に伸ばします。

その後、全体を平滑に整えることで、新規防水層の密着性を最大化します。

モルタルが完全に硬化するまで適切な養生時間を確保することもポイントです。この工程を省略すると、防水層の膜厚が均一に仕上がらず、性能低下のリスクが高まります。

プライマー塗布:接着性の向上

プライマーは、防水材と下地を密着させるための接着材で、次工程の品質を左右する重要な工程です。

下地の種類や状態に応じて、最適なプライマーを選定し、均一に塗布します。

今回の工事では、ウレタン塗膜防水専用のプライマーを採用しました。まず、ローラーや刷毛を使用して、下地全体にプライマーを塗布します。

特に端部や立上り部など、密着性が重要な箇所は入念に塗り込みます。プライマーが適切に塗布されることで、新規防水材との密着性が飛躍的に向上し、剥離のリスクを防ぎます。

また、プライマー塗布後は、指触確認を行い、十分に乾燥していることを確認した上で次工程に進みます。乾燥不十分の状態で次の材料を施工すると、接着不良や膨れの原因となるため、乾燥時間を厳守することが大切です。

⑨改修ドレンの取り付け

排水機能を向上させるため、新しい鉛製の改修ドレンを取り付けます。

ジャバラホースを活用して既存排水管と連結し、建物の動きや振動に伴う不具合を防ぎます。

この工程により、排水能力が大幅に向上し、屋上全体の耐久性を高めます。

 

ここまでの作業で、既存の防水層を撤去し、下地の調整から改修用ドレンの設置までの工程が完了しました。

特に下地処理に重点を置いたことで、新規防水層の性能を最大限に発揮できる準備が整いました。

築33年の鉄筋コンクリート造(RC造)という構造的背景を考慮し、劣化箇所の徹底的な補修を行ったことが、この工事の信頼性を支えています。

次回はいよいよ「通気緩衝工法」の本格的な施工に進みます。この工法は、防水層の膨れを防ぎ、長期的な耐久性を確保するために重要な役割を果たします。

その第一歩として、QVシートの施工を中心に、シート貼り付けや転圧、脱気システムの形成について詳しく解説します。

次回も引き続き、確かな施工の流れを追いながら、防水工事の全体像をご紹介します。お楽しみに!