屋上防水が建物にとってどれほど重要かご存知でしょうか?
屋上は、雨風・紫外線・温度変化などの過酷な環境に常に晒されており、防水機能が劣化すれば、建物内部への浸水はもちろん、構造そのものにも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
今回は、江東区にあるオフィスビルの屋上防水改修工事の様子を、写真とともに詳しくご紹介します。採用されたのは、「ウレタン塗膜防水通気緩衝工法」。建物の長寿命化に欠かせない防水工事の実際を、どうぞご覧ください。
施工前の状況:既存ゴムシート防水の課題
まずは施工前の状態です。既存の防水層はゴムシート防水でしたが、経年劣化や傷みが見て取れます。

排水溝部分にテープで補修された痕跡があり、既存防水層の限界がうかがえます。長年ビルを守ってきたゴムシート防水も、いよいよ改修の時期を迎えたといえるでしょう。

既存防水層の撤去作業
工事は、既存ゴムシート防水層の撤去から始まります。
アルミ製の押さえ金物を石頭ハンマーやバールで丁寧に取り外している様子です。これらの金物は、防水シートの端部を固定する役割を担っていました。


下記は立ち上がり部分のゴムシート撤去の動画です。注目すべきは笠木の下部。これは屋上の手すり上部に設けられる仕上げ材で、雨水の浸入を防ぐ重要なパーツです。
関連動画:ゴムシートの撤去
笠木の下150mmほどの既存防水層をあえて残していることが分かります。これは、新旧防水層の接続性を高めるための工夫であり、防水性を確保する上でも非常に重要な工程です。

防水層を撤去した後の下地は、平滑とは限りません。そのため、次に行うのが下地調整です。小さな凹凸やゴミを覆い、次に塗布する防水材がしっかりと密着するように整えます。
また、下地調整は単に平らにするだけでなく、下地に残る水分や細かいひび割れなどが新しい防水層に悪影響を与えるのを防ぐ役割も果たしています。

ドレン処理と清掃
ドレンは、屋上の雨水を効率よく排出するための要所です。
ドレン周りの一時的な防水処理の様子。ひび割れがある箇所には弾性材料を充填し、水の浸入を防ぎます。

ケレンなどの工具を使って下地のゴミや突起物を丁寧に除去している様子です。この工程は仕上がりをフラットに整えるための、地道で重要な作業です。

改修ドレンの取り付け
新しく設置された鉛製の改修ドレンです。この改修用ドレンは、旧排水設備と新しい防水層をつなぐ重要な部材。以下のような効果が期待されます。
- ドレンまわりの防水性強化:排水口と新しい防水層が一体化し、水の侵入を防ぎます。
- 既存配管の劣化への対応:ドレンに接続されたジャバラホースが、劣化した配管の動きを吸収し、漏水を抑制します。

関連動画:改修ドレンの設置

入隅シーリング ― 建物の動きに対応
屋上の平面と立ち上がりの接点である入隅は、防水層が破断しやすい箇所です。
この部分にシール材を充填している様子です。建物の動きによる応力を緩衝し、ひび割れを防ぐための重要な工程です。

プライマー塗布
防水材をしっかり接着させるために欠かせないのがプライマー。下地にプライマーを塗ることで接着力が向上し、防水層の耐久性・性能が飛躍的に高まります。

ここまで、屋上防水改修工事の下準備からウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)の主要工程までを紹介しました。古い防水層の撤去、清掃や下地処理、プライマー塗布を丁寧に行い、通気緩衝シートの敷設や脱気筒・改修用ドレンの取り付けも完了しました。さらにウレタン防水材を2層重ね塗りしてトップコートで表面を保護しました。耐久性の高い防水層が形成されました。
この続きは次回のブログでお伝えします。このあとの工程は、細部の仕上げと最終点検を行い、防水工事の完成を目指します。
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