杉並区・RCマンション大規模改修工事①

東京都杉並区にある杉並店・東京防水職人の近隣にある築33年のRC造4階建てタイル張りマンションにて、外壁改修・シーリング・タイル補修・長尺シート張替え・釈迦戸タイル工事などを含む大規模改修工事を行いました。

ご依頼主は、杉並店のオープン記念に開催した親子の羽子板ペイント教室にご参加いただいた方でした。この時の御縁から弊社にご相談を頂きました。

地域との繋がりから始まったこの工事は、調査・準備・施工・全てにおいて高度な仕事が問われる現場でした。

目次

アスベスト調査と行政対応

工事開始前に行ったのはアスベスト調査です。

図面や書類だけでは判断が付かない、アスベストが含有されている可能性がある材料を絞り込み、調査を行いました。

壁 アスベスト検体採取

調査対象となったのは、①外壁タイルの裏側に使われていた接着剤、②外壁塗膜の下地材、③2階廊下に敷かれた長尺シートの裏面ボンドの3点です。

床 アスベスト検体採取

穴あけや研磨といった穿孔作業時には粉じんが発生するため、検体採取と分析を、資格保有者が慎重に実施しました。

アスベスト検体 バック

検体はアスベスト調査センターに送りました。

分析の結果は外壁関連の2箇所からはアスベストは検出されなかったものの、2階廊下の長尺シートの接着剤からクリソタイル(白石綿)が検出されました。この報告を受け、速やかに行政へ届け出を行い、作業員には防じんマスクを着用やヘパフィルターの使用など、アスベスト対策を万全に整えた上で作業を実施しました。


産廃処理は専門業者と連携し、元の長尺シートと固定金具など、すべて適切に処分しました。

ヘパフィルター

外壁シーリングの問題点

次に着手したのは外壁の既存シーリング材の撤去です。古いシールを切ると、そこから水が大量に噴き出す箇所があり、これが漏水の一因であることが明らかになりました。

窓枠 シール撤去 雨水噴出


元施工は大手メーカーでしたが、下請けに丸投げされていたようで、管理不在の中で工事が行われたためか、シーリングの仕上がりは劣悪でした。施工の質としては素人同然の仕上がりで、防水機能はすでに失われていました。

窓枠 シール撤去 雨水噴出


撤去後は、非露出部には塗装対応型のポリウレタンシーリングを、露出部には耐候性の高い変成シリコンを使い分け、部位ごとに適切な処理を施しました。

変性シリコン

また、出窓サッシやサッシまわりなど動きがある部位には、可動性に対応できるような仕様を施し、オーバーブリッジの発想でシーリングを対応しました。

オーバーブリッジの発想 シーリング

これにより、熱伸縮や日射によるひび割れの防止が期待できます。

Vカット補修

調査時に発見された外壁クラックについては、幅を測定し、0.3mm以上のものについてはVカットもしくはUカットを行った後、樹脂モルタルで補修。

塗装時には既存模様に馴染ませるためパターン合わせを実施し、補修跡が目立たないよう丁寧に仕上げました。

Vカット

特筆すべきは、各作業の実数(実際に発生した数量)を基に報告書を作成し、簡易図面にて補修箇所を可視化したことです。これは職人の“誠実な施工”を裏付けるものであり、追加請求も明瞭で、施主様からの信頼にもつながりました。

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爆裂補修とアンカーピンニング補強

今回の工事の発端となったのは、外壁に生じた“爆裂”と呼ばれるコンクリートの剥落現象でした。これはタイル面の劣化とともにコンクリートの中性化が進んだことにより、内部鉄筋が膨張して表層が剥がれ落ちたもので、居住者にとっては非常に危険な状態でした。


この爆裂部分は、まず既存仕上げを丁寧に剥がし、鉄筋のサビをケレン・防錆処理後、樹脂モルタルを用いて再形成しました。

浮きが目立った2階腰壁には、アンカーピンニングによる補強が施されました。

アンカーピンニング

正式な工法ではなく、熟練職人の判断により「鉄筋」を手作業で加工したハンドメイド仕様でした。

その技術力と発想力はまさに熟練の証しです。

手作りアンカーピンニング

関連動画 アンカーピンニング

ここまでRCタイル張りマンションのアスベスト調査、外壁改修・シーリング擁壁補修をご紹介しました。

次回はタイル張り替えや誘発目地によるひび割れ防止、アスベスト対策を徹底した長尺シート施工、バルコニー防水と意匠の刷新、屋上塔屋の釈迦戸タイル補修まで、現場の知恵と技術を結集した様子をご紹介します。

見えない部分への配慮まで尽くし、建物の未来を見据えた工事を実現。プロの総合力が光る現場の全貌を、ぜひご覧ください。

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