目次
このシリーズ最初のブログでご紹介しました外壁の防水材、セブンSSのご説明を致します。
外壁に塗る防水材は、実のところパラペットの屋根などに敷く防水材と同じではありません。
今回は、防水材との違いや、外壁タイル部に防水材を塗るプラス面やマイナス面もお話し致します。
〔最初にご紹介した記事〕
セブンSSの施工
外壁タイル部の修理と高圧洗浄が終わり、ここからはセブンSSの塗装となります。
高圧洗浄は、散水試験や目地材のほこりなどを飛ばすことも兼ねています。
薬品洗浄をしながら不備がないか確認。
洗浄後は、いよいよ防水材の塗装に進みます。
このセブンSS、便宜上タイル壁面用の防水材と呼んでいますが、正確には陸屋根(パラペット)の上に施工する防水材とは別物です。
陸屋根など平面に敷く防水材の一部は、2液混合や1液混合などで、床の上に流し込み時間が経つと固まる仕組みになっています。
立面と呼ばれる、床から壁へと続いた立ち上がり部分に使う防水材は、床面用のものに、ダレ止め入った防水材で、立ち上がった立面でも付着して固まるものになっているのです。
これがいわゆる『防水材』ですが、壁面に塗るのはこれら防水材とは別物で、防水効果のある『塗料』となります。
壁面に防水を施す場合は、膜厚をつければつけるほど防水の効果が高くなりますので、いかにして塗膜の厚みを出すかということが重要です。
そんな膜厚を作るための塗料として、良く使用されるのがセブンSS。
この塗料は、タイル壁などに適しています。
セブンSSの施工方法は、5回塗りです。
シーラーで下塗りをした後、セブンSSを2回塗り、さらにトップコートを2回重ねます。
さらにセブンSSで塗る際にはマスチックローラーというローラーを使って、わざとボコボコした面に仕上げるのです。これを柚肌塗りといいます。
セブンSSの仕上がりは、少し特殊な仕上がりです。
元の壁面の上に、ちょうどカエルの卵をおおうゼリー状のものを想像して頂くと分かりやすいのですが、少し濁った透明なゼリーっぽい膜ができます。
テカテカした仕上がりになりますし、デコボコとしていますので人によっては綺麗な仕上がりと思わない方もいらっしゃいます。
それでも、こうして膜厚をつけることで防水効果をアップさせるのです。
この仕上がりがどうしてもダメな方もいらっしゃり、誰でもできる工事ではありませんが、タイル壁面の防水工事として、僕はこれをおすすめ致します。
(通常の壁にセブンウォール等がある)
他にも、少しでも壁面を綺麗に仕上げる方法として、柚肌にはせず、セブンSSを三回塗りする方法もありますが、回数が通常の工事よりも増えますので、それだけ料金も高額になります。
このセブンSSを含め、防水効果のある塗料は一つ気をつけなければならないことがあるのです。
防水効果のある塗料は塗った後のことまで考えることが必要
セブンSSなど、防水効果のある塗料を塗った壁にはある約束事が課せられます。
それは、次の再塗装もセブンSSと同等のものを使用しなければならないということです。
一度こうした塗料を使用したらランクを下げたり種類を変えたりすることは、物理的にできなくなります。
なぜなら、メーカーが他の塗料を塗り重ねることを推奨していないからです。
また間違った塗料を塗ってしまうと、せっかく高いお金を出して前回塗ったセブンSSの効果が台無しになる場合も。
それだけ家の建て方と塗料の選び方は、数年後、さらには10年後と未来を見る必要があるのです。
効果だけを考えれば、どんな外壁にも使用したくなりますが、このセブンSSはどの壁にも使えるわけではありません。
セブンSSが使えない外壁にはどのような方法があるのか、そして外壁に防水効果の塗料を塗るには、どんなプラス面とマイナス面があるのか説明を致します。
〔セブンSSを解説した記事〕
どんな壁にもセブンSSは有効?
モルタルやコンクリートの打ちっぱなし壁であれば、セブンSSではなく弾性塗料を使用する場合があります。
この弾性塗料は名前の通り、塗った後に高い伸縮性を持つ塗料なので、クラックなどができたモルタル壁には適しているのです。
しかし、気密性が高く(防水に優れている為)膨れの原因となってしまい、一度塗膜が風船のように膨らんでしまうと元には戻りません。(蒸気発泡)などで濃い色は選びずらくなります。
つまり、これらの塗料は剥落防止のような効果もあり、利点も多いですが、壁によっては膨れの原因となり、さらには一度この塗料を使ったら最後まで
塗装工事とはプラス面のためにマイナス面を引き受けること
再塗装のご依頼を頂く際に、その多くは外壁の状態に問題があり、それをなんとかおさめるための塗装工事をします。
そのため、家の状態によって使用する塗料はさまざまですし、工法も一つではありません。
塗装工事は、必ずどこかでプラス面とマイナス面の折り合いをつけなければならないのです。
プラス面としてクラックを補修し、防水効果をアップしたことで、マイナス面として補修工事のあとが目立つ状態で残ることもあるでしょう。
防水効果がアップはしたものの、元の壁よりもゴツい仕上がりになってしまい見た目が劣ってしまう場合も・・・。
再塗装の場合、少しでも壁の問題を抑え家の寿命を持たせるためには、必ずマイナイス面を引き受けなければならないのです。
しかし、マイナス面を引き受けてプラス面が出る工事は、まだ良い方なのかも知れません。
なぜなら、あまりにも元の状態が悪く・・・手の施し用の無い家というのがあるからです。
たった一度の間違いが、外壁の未来を決めてしまう
ご依頼をして来られる方の中には、大きな誤解をしていらっしゃる方もいます。
それは、家がどんな状態であってもプロの業者に頼めばなんとかなると思っていることです。
しかし、DIYや安い工事を選んだことで、適当なシリコン系のシーリング材を外壁に塗ってしまい、それによって他の塗料を重ねることが出来なくなってしまうと、もはや何も手をだすことはできません。
「なんでプロなのにできないの?」
と言われることもありますが、一度間違った材料を塗ってしまった外壁は、他の材料を重ねても剥がれてしまい、物理的に何もできないのです。
それだけ、外壁と材料には相性がありますし、塗料と塗料にも相性が存在します。
安いことだけを前面に推して建てた家や、DIYで安く済ませた塗装工事。さらには相見積もりを取って、料金の安い業者で行った工事は、下地や塗料との相性を無視することが多いため、その金額に見合った結果がついて回ります。
家の塗装は、いくら後からリカバーしようとしても、元が悪ければおしまいです。
だからこそ、僕は塗料を選ぶ時に慎重になり、材料担当にしつこいほど確認をして、お客様にご提案をします。(担当にはいつも助けていただいています)
間違った塗料を重ねないために。現状をなんとか維持するために。
たとえ結果として、外壁が汚く見えたり補修箇所が目立ってしまったりしたとしても、雨漏りを止め、今後10年お客様が快適に過ごせる家を目指します。
〔セブンSSの施工例〕
外壁の防水工事はそれぞれの専門職人、お客様との連携がなによりも大切
工事をしていると天候や状況で順番通りに工事が進まないことがありますが、その際に職人同士がお互いの仕事をリスペクトしていれば、現場は上手く事が運びます。
特に防水工事の場合は、手順次第で防水をダメにしてしまうことがあるのでなおさらです。
逆にお互いの工事にリスペクトがなく、意思の疎通が取れていないと、せっかく防水工事を施した壁に、設備他の方が穴を開けてしまい、防水を台無しにしてしまうなどトラブルが起こります。(使ってほしくないシリコンなどを適当に施工する人たちもいる)
そうならないために、各担当の初日には現場に立ち会い、現場で打合せします。
施主様とも膝を突き合わせて工事内容を確認して内容を詰めるのが大切なのです。
今回こちらの建物に施したセブンSSは、壁面の防水効果を求める上でベストの選択だったと思っています。
見た目はたしかに少し悪くなったと思う方もいると思いますが、施主様はその結果は引き受けてくださいました。
多少の見た目よりも、今後も雨漏りしない仕上がりをめざして下さったことで、塗装職人とお客様の思いが足並みを揃えられたのだと思います。
このブログを見ていらっしゃる方が、塗装工事をする際にもきっと同じ問題がついて回ります。
そんな時、どこまで工事のマイナス面を引き受けることができるか、一度考えてみて下さい。
そうすれば、おのずとベストな工法が見えてくるはずです。
実りある工事をするためには、それが一番近道となります。