前回の工事の続きとなります。今回はいよいよ本番の塗装工事です。
塗装工事をする際に、いつもお客様の問題点を補修できる工事内容ができれば…と考えていますが、そこにはさまざまな方法と材料の種類があります。
今回は、そんな工事の方法と費用の関係性についてのお話です。
〔関連記事:前回のブログ〕
鉄板屋根の塗装
鉄板屋根の塗装は、ただ屋根を塗装するだけではなく屋根用のフックボルトの防水パッキン、俗に言う止水パッキンの防水処理もします。
なぜなら、止水パッキンは日差しで劣化するからです。
また、屋根を止めているフックは鉄素材なので、サビ予防のためにフックボルトキャップなどが必要になりますが、屋根が広ければ広いほどものすごい数のフックボルトキャップ交換となりますので、そこには費用がかかってきます。
このフックボルトキャップ、職人の手でひとつひとつ被せて止めていくため、非常に手間も時間もかかり、よほど潤沢な工事費用が出ない限り難しい方法です。
そこで、でてくるのがソフトクリーム状にフックにシリコンを被せて覆う工事となります。
フックボルトキャップよりも費用を抑えることが可能です。
とはいえ、フックボルトキャップとまったく同じ効果かというと、そこは違います。
例えるのであれば、うなぎにも松竹梅があるように、フックボルトの工事にも松竹梅があるといえばお分かり頂けますでしょうか。
すべておいしく食べられるうなぎではありますが、等級が違う。
つまり、同じフックボルトの保護だとしても、その効果はやや違うのです。
それでも、まったくやらないよりは遙かに効果を発揮します。
予算ももちろんではありますが、目的に見合った工事が何よりも大切です。
〔関連動画:折板屋根を塗装技能士の塗装職人が施工しました〕
外壁の塗装
外壁は、タイル面をセブンSS、ALC面にはラジカル制御型塗料で塗装を行いました。セブンSSは、タイルの上にゼリー状の膜ができるような仕上がりになるため、タイルの割れを防ぐことが可能に。これは通常のタイル塗装よりもタイルを守る効果がアップしますが、もちろん通常よりも費用がかかり、見た目がすこしでこぼこした仕上がりになるためお客様によっては選ばれない方も。
それでも、この先10年タイル割れを回避したいのであれば、この工法はベストだと言えます。
また、タイルの壁面は目地が少なく割れやすい状態だったので、目地を作り力の逃げ場を設けることで割れを軽減できるようにしました。
こうすることで、さらにセブンSSの効果を向上させることができます。
〔関連動画:セブンSSの施工動画〕
そして、ALC壁部分の塗装は通常の弾性塗料ではなく、ラジカル制御型の塗料、つまりは壁の表面でおこるチョーキング現象を抑える効果に秀でた塗料を選びました。
そもそも、このチョーキング現象とはなんでしょう。
たまに壁の表面を触ると、まるでチョークのような白い粉が手や服についたことはありませんか?あれがチョーキング現象です。
壁に塗料の中にある酸化チタンに紫外線が当たることでラジカルが発生し、これが元で壁の劣化状態であるチョーキング現象を引き起こすのです。
〔関連記事:劣化と補修 チョーキング〕
外壁塗料の劣化は、雨などをはじく力が弱まり水の浸入を許し、雨漏りの可能性がでてきます。
こうした紫外線による壁の劣化を抑えるための塗料が、ラジカル制御型塗料なのです。
いろいろな塗料がありますが、外壁の紫外線の当たり具合や状態を考えると、これもお客様が選択できる範囲の中でベストだったと言えます。
ちなみに廊下天井の塗装もしていますが、こちらは同じ白で塗っているものの、別種類の塗料となります。
なぜなら、天井は水蒸気やタバコのヤニなどが付きやすいため、透湿性に特化した塗料が必要なのです。
これで外壁の塗装は終了となります。
次は、高架水槽といったイレギュラーかつ、マンションなどでは多い塗装内容についての紹介です。
より塗装効果を高めるための工事をしましたので、ご覧ください。
高架水槽の塗装
高架水槽の塗装は、専用仕様の塗料となります。
日本ペイントから発売されている、紫外線を通さないタイプのもので、下塗り剤、上塗り剤ともに専用の塗装方法があるのです。
また、ここでは金属部分の補修にサビスタを使いました。
サビスタとは、金属が組み合わさっていてサビを落とすためのケレンが出来ない場所でも、錆止めの効果が期待できる材料です。
高架水槽はそもそも中に水をためるもので屋外設置のため、サビは大敵。
鉄骨階段などにもこのサビスタは使われるのですが、錆止めとは持ちが違います。
ちなみにいわゆる錆止めは、サビを遅らせるだけで、完全に阻止するわけではありません。
仕様書をよく読むと、補修塗りが必要で2回錆止めを塗る必要があると書いてあります。
さらに、この錆止めは2年に1回塗装が必要です。
鉄部は建物の至る所に使われているため、その度に足場を組む必要がでます。
これでは、いくらお金がかかるかわかりません。
このサビスタは、錆止めに比べれば値段の高い材料です。
しかし、2年に1回足場を建てて錆止めを塗り直す工事をすることを考えれば、ケレン補助材サビスタのほうが安いと言えます。
しかも錆止めの場合は、きっちりケレンをかけていないところは、錆止め材が上手く塗装面に乗りません。
ここでも、サビスタの方に軍配があがります。
金額=クオリティというわけではありませんが、高い薬剤には高いなりの効果があるのです。
塗装工事でつかう塗料と費用の関係性とは
前回のブログも含めて、屋根、ALC、タイル、廊下天井、高架水槽などそれぞれ、箇所にあった塗装というものがあると紹介して参りました。
実は、外壁や屋根などさまざまな箇所のトラブルに対応する補修材や塗料というのは、数多く良いものがあります。
僕は、いつもさまざまな塗料について勉強をしています。
お客様に最適な塗料や補修剤をご提案できるように、材料についてメーカーに話を聞きに行き、実際使っている職人にも意見を求め、工事後の家の状態や経過などにも注目します。
ある意味、塗装工事における薬剤師のようなことができればと考えているからです。
〔関連動画:この工事の全行程〕
お客様の直したい箇所を聞き、そこに適切な塗料をご提案する。
こうした提案の最大の妨げは、ディスカウントを求められることです。
なぜか、塗装工事というのは安いところでお得に工事をするのが重要視されています。
もちろんボッタクリと言われるような悪質な業者もありますので、お客様が業者を選ぶ際に肩の力が入ってしまうことは分かるのですが、弊社の場合はこうしたブログや、これまで積み重ねてきた会社としての歴史や経験、工事や材料についての知識といった、「塗装職人ブランド」があります。
ですので、提案した工事を「安くしてよ」と言われてしまうと、その安さ合わせになり、安価な材料と工事方法をとるしかないのです。
なぜなら、400円だして安い牛丼を食べられたとしても、400円で高級料亭のすき焼きは食べられませんよね?
高級料亭に行って、「400円ですき焼き食べさせてよ」と言ったとして、だれが喜んで出してくれるでしょうか?
少なくとも、食材の質を落とさずに400円ですき焼きを出したら数日で店が傾いてしまうでしょう。
塗装も同じです。高い材料を使う以上は工事費用も高くなるのです。
もしも、サビスタなどそれなりの金額の材料を使っているのに、安い工事費を業者から提案されたら、それこそ疑わなければなりません。
それは、希釈して薄く塗っている可能性があるからです。
どんな業者も、自分の会社がマイナスになってまで仕事をしたいという人はいません。
きちんと対価が支払われるからこそ、職人は良い仕事をしますし、会社も成り立ちます。
サビスタは先ほども書きましたように、非常に優れた材料なのでそれなりの費用がかかります。それなのに、他と比べて工事費用が安い場合は、薄めたり薄く引き延ばしたりして使っている可能性が……。
クオリティを求めるのであれば、それなりのお金を掛けることは必要です。
僕は、お客様に提案する際に高い材料から提案するということはしません。
必ず、結果を出すために最良の方法を提案します。無駄にお金や手間をかけるようなことをしても、それは家のためにはならないからです。
今回の塗装工事も、各所に合った塗料をいろいろと提案させて頂きました。
お客様が、それぞれの工事に見合う金額を了承され選ばれたことで、今回さまざまな工夫を凝らした塗装が可能になったのです。
〔関連記事:今回の工事・足場設置前〕
塗装職人の工事は、高い塗料を売りつけ、わーーーっと勢いで工事を決断させるようなことはしません。
必ず、しっかりと説明し、考える時間をたっぷりと取り、お客様に判断をお任せします。
それが、良い工事をするために大切なことだからです。
僕はいつも、雨漏り工事の依頼をされると「止められるか分かりません」とお答えします。
一見、無責任な言葉に聞こえるかもしれませんが、実はこの言葉の裏では「なんとしても止めたい!原因を突き止めたい!でもプロであるがゆえにこれだけ難しい雨漏りについて適当なことは言えない」と考え、絞り出したのが「止められるか分かりません」なのです。
〔関連動画:担当した防水工事〕
いつでもプロとして、最良の方法を提案します。
それが職人としてのプライドだからです。
これからも塗装職人の品質を実感して頂けるよう、がんばりたいと思います。