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残工事 長尺シートとタキステップの貼り込み

By 2023年4月7日9月 26th, 2023長尺シート, 防水担当の日誌

世田谷の事務所で工事を引き受けてから、7回にわたって紹介してきましたこちらの現場も、足場の解体作業が終わり…いよいよ残工事です。

今回は、ウレタン防水を施した外廊下や外階段に、長尺シートやタキステップの貼り込みをします。

たかだか長尺シートの貼り込みといっても、実は多くの技術や工具を必要とする作業です。

そこで、今回はどんな作業をしているのか、詳しくお話したいと思います。

関連記事 前回のブログ記事

足場解体前の検査 足場解体後の点検 プロの目線とは

 

ボンド缶の養生

まずは、ボンド缶の養生についてです。

タキステップや長尺シートを貼るためのボンドは、生ものなので封が甘いとどんどん乾燥して固まり、使えなくなります。

それでは、高価な材料が無駄になってしまいますので、しっかりと蓋がしまるように開け口部分を養生するのです。

小さな細工ではありますが、長尺シートを貼り込むためのボンド缶を最後まで綺麗に使い切ることも、工事の大切なポイントとなります。

 

ボンド塗布(くじびき)

次に、階段などにボンドを塗っていきます。

その際には、クシ小手という道具を使ってボンドの塗布をするのです。

クシ小手はその名の通り、クシ状になった小手で、ボンドを小手にのせると塗る際に刃先がつぶれ、ボンドが多くつくところと少なめにつくところがサンドイッチ状になります。

長尺シートを上から貼り込んだ際に、このボンドが多い部分が隙間なく潰れて広がり、ぴったりと接着することが可能に。

 

長尺シートやタキステップは一見すると、ただボンドをつけて貼り込めば良いように思いますが、実はこうしたボンドを塗ること一つとても技術が必要です。

塗装面に行き渡るようボンドに膜厚をつけて塗らないと、長尺シートなどを綺麗に貼り込むことは不可能となります。

 

関連動画  マンション階段のタキステップの設置工事

 

長尺シートのカット

長尺シートやタキステップは非常に重量があるため、現場で広げる際にも専用のベルトコンベアのような器具が必要です。

器具を使って廊下などに広げたシートを、専用のカッターで長さや余分な部分のカットをします。

幅は、階段用のタキステップの場合は、段鼻から蹴込みまで1枚になっており900、1200と幅があるため、それらを基準に敷き込みを。長尺シートは廊下幅に合わせてオーダーをします。タキステップも階段幅がイレギュラーな場合は、オーダー可能です。

 

転圧をかける

ボンドを塗って長尺シートやタキステップを重ねたら、オープンタイムとよばれるガス抜きの時間です。

オープンタイムは職人によっては、時間を計る場合もありますし、指触してカウントする場合もあります。

ガスは後から上がってくるため、ガス抜きをしっかりとしないとデコボコした仕上がりになり、美しくありません。

ある程度乾いたら、今度は転圧ローラーを使って長尺シートと床材がピッタリと密着するように圧をかけていきます。

細かい部分は小さい転圧ローラーで、広い面は大きな転圧ローラーを。広い面積用の転圧ローラーは、雑巾がけをするように床に押しつけて使います。

非常に力を使うため、慣れていない方であれば一日で体が動かなくなるほどです。

 

ボンド塗布、観音貼り

ボンドで貼り込んだ際に、気をつけなければならないことがあります。

それは、一旦廊下にシートを貼ると、廊下を歩けなくなるということです。(配慮しないと)

 

新築の場合は、人がまだ住んでいませんので一気に貼り込むことが可能ですが、塗装職人で請ける工事のほとんどは、築10年以上のお宅で、居住者の方が住んでいる状態で工事をします。

そのため、歩けなくなっては困りますので、廊下の片方に通り道を残し、半々ずつ施工をするのです。(階段は又、少し違いますが歩行を前提に施工します)

この時に使う技法が、観音貼りとなります。

仏壇の観音開きを想像してみて下さい、あの仏壇の扉のように長尺シートを折りたたみながら、半分ずつ塗って乾かし転圧して歩けるようになってからもう片方にボンドをつけて貼り込むのです。

関連動画  マンション廊下と階段の長尺シート

溶接作業

長尺シートの貼り込みが終わったら、長尺シートの接続部分の溶接をします。階段同様薄堀はあり。

ただ貼り込んだだけでは、接続部分から剥がれてしまうため、ガスバーナーを使って溶接し、しっかりと接続部分が繋がるように接着を。(コードレスの事例。ライスターが基本→電動項)

こうした端末処理を疎かにすると、そこから長尺シートが剥がれ、せっかく大金を使っておこなった工事が無駄になってしまいます。

しかし、工事費用が安い業者などの場合は、時間を短縮するためボンドで貼り付けただけで端末処理を疎かにする場合も。(外周のシールも含む)

同じ長尺シートの貼り込みでも、こうしたところで値段の差がでます。

 

シール処理

長尺シートの端末部分は、溶接後さらにシール処理を施します。

シーリングは、防水の効果としてはウレタン防水や、長尺シートに比べると強度は落ちるものの、そうした防水材にプラスする事で効果を高めてくれるのです。

たかがシーリング、されどシーリング…。最後のおさめをしっかりすることがプロの工事といえます。

 

ボンドのガス抜きとステップの貼り込み

ボンドをつけ長尺シートなどを貼り込んだ際に、ガス抜きが大事だとお話ししました。

階段に貼り込むタキステップも同様となります。

 

さらにタキステップの場合、段鼻の部分にはステップの重ね張りが必要になるため、ガスの抜き方にも一工夫必要です。

ステップを貼り込む際は、タキステップの貼り付け状態を指触して、半熟状態のところで重ねます。そして端にこうして印を挟んで完全には接着しない状態を作り、ガス抜きができる部分を作っておきます。

タキステップの表面にガスが上がってきたところで、この部分からガスを抜くのです。

一段一段丁寧にガス抜きをし、こうした細やかな作業が、美しいタキステップの階段の仕上げへと繋がります。

 

つなぎ目のU字溝掘り

シート同士に角があるのでつなぎ目が四角柱みたいな形になるため、角があってまっすぐ溶接棒が入りません。

ですので、溝を掘る専用の刃物でU字にカットして、そこを溶接します。

密着性をあげるために、長尺シートの溶接と同様にブチルゴムを投入する場合も。

前回のブログでも言いましたが、こうした端の処理をしっかりすることで、工事に差が出ます。

素人のDIYや、安い費用で工事した場合、こうした細かい工事を落としがちです。

しかし端末をしっかりと溶接しないとせっかくタキステップや長尺シートを使って防水工事を兼ねた工事をしたとしても無駄になってしまいます。

 

コーナーの溶接

シートのめくれが出やすいのが、コーナーです。

このコーナー部分も、しっかり溶接をします。

ライスターに溶接棒を通して、ぐっと端を押さえ込むように温風を出しながら接着させます。

長尺シートはボンドでも十分に接着すると言われていますが、こうした端の処理は特殊な器具が必要となります。

関連記事 長尺シート

長尺シート

その他エアコン裏施工

エアコンの室外機の下なども、長尺シートを敷き込みます。

今回の現場では、2階建ての大きな室外機でしたので非常に大変でした。

ここでも観音貼りでシートを貼って、室外機を持ち上げて敷き込みを。

室外機をずらして室外機を戻せるところを先に貼って、その後、戻して空いたスペースに貼ります。

ボンド、シート貼り込み、転圧と作業を進め、シールまでしたところで室外機をもどし、後半部分も同様に作業を。

塗膜防水の時はジャッキのような工具で持ち上げたりもしますが四点の跡がつきます。ですので、ここでは人力で持ち上げることに。この室外機は異様に重かったので職人泣かせでした。

関連動画 床に置いてある室外機の下はどうやって施工する?

長尺シートやタキステップの貼り込みは単純に見えてプロの技が必要

塗装職人に見積もり依頼を頂いた際に、半分くらいのお客様は工事費用が他の業者と違うため、高いと感じるようです。

 

しかし、前回と今回で紹介したブログの通り、たかだか長尺シートの貼り込みでも、ここまで手間と技と器具を駆使した工事を行っています。

そのため職人も選んでいますし、他の業者のようにその場雇いの職人などはいません。

そんな専門家集団の塗装職人ですが、実はできないことがあります。

DIYやひどい工事で手がつけられない状態になった外壁などです。

DIYが好きなお客様で、ホームセンターなどで買った塗料などを塗って、そろそろ手に負えないからプロにお願いしますという方もいらっしゃいますが、この場合プロでも手の施しようがありません。

 

なぜなら、重ねられない塗料の場合、元の塗料を撤去しない限り剥がれてしまうため塗装工事自体ができないからです。水性の塗料は基本塗り重ねができるとされていますが、これも塗り重ねには細かい決まりや組み合わせがあります。

さらに、このブログで説明した長尺シートも状態によっては貼り込めません。貼り込むと10年ほどは持ちますが、傷んだ時にはすべて剥がして貼り替えが必要なため、剥がすのにも費用がかかります。

しかし、下地の処理が悪く剥がしても貼り込めない場合などが出てくるのです。

そのため、安易に素人の方が貼り込むのはおすすめできません。

 

関連動画 こちらのマンションの剪定・溶接・屋根塗装・タイル塗装・左官・長尺シート 全工程動画

 

外壁の塗装、長尺シートの貼り込みと、一見すると簡単そうに見える作業ですが、建材や材料、環境などとのバランスや、重ねたり端をおさめたりするような細かな技術がどれも必要です。

そのためにも、外壁や屋根などでお困りの事が起こったときは自己判断するのではなく、まずはプロに相談してみて下さい。

何千万円もかけて、購入した家や建物です。

最後まで手を抜くことなく、しっかりとした工事をして家を持たせて下さい。

私たちは、持てる技術全てを持って、そのお手伝いを致します。