ALCパネルは高温高圧で作られた気泡コンクリート(オートクレーブ軽量気泡コンクリート)で、パネル内部には鉄筋が張り巡らされ柔軟性があるものの多孔質がゆえに衝撃に弱く欠損・クラック・爆裂がある場合にはALC素材にあった最適な補修方法を施し塗装で仕上げます。
ALCパネルの特性
ALCとはパネル式の外壁で鉄骨造の集合住宅によく使われている軽量気泡コンクリート外壁材で1枚1枚パネル状に組み立てられています。
特に低層マンションではよく使われていて防水工事部でも多くの実績があります。改修工事では住友金属鉱山のシポレックスやクリオン、へーベルがあります。
シール工事もセットなため専門シール職人と一級塗装技能士の施工で耐久性に特化した塗装をしています。
ALCは軽く断熱性能に優れていますが、衝撃には弱くもろいデメリットがあります。メーカーでは旭化成やシポレックスが有名です。
鉄筋コンクリートで使用している鉄筋の半分ほどの細い鉄筋が張り巡らされていますので、パネル自体の柔軟性はあります。
水をとても吸収する壁材なので、欠けている部分から鉄筋がさびる可能性もあるため、ALC専用補修材、もしくはエポキシ樹脂モルタル等にて補修をします。
サッシまわりや目地のシーリングが劣化している場合は、塗装の相性を考えてウレタンと変性シリコンを使い分けています。
欠損や割れなどは目視の検査でわかりますが、ALCは鉄筋コンクリートより密度が少なく、パネル自体が気泡だらけで、コンクリートに比べて打音検査でも跳ね返りの音がわかりづらいため、ボルト穴の爆裂を見逃さずに補修することが重要です。
欠損には吸収されやすいため、プライマーをたっぷり塗布して補修するようにすると、再度欠損になる可能性もなくなります。
また意匠パネルなどは、デザイン性に優れる代わりに平面でない分塗装の際も、透け、カスレが出ないように、塗料の希釈率を守った塗装が必要になります。
ALCの特徴と補修
ALCは多孔質のため素材的に雨水などの水分を非常によく吸収します。ALCパネル全体としてみれば、乾燥収縮率や熱膨張率が小さく反りやたわみが少ない素材です。
重さはコンクリートの約1/4と軽量で、気泡コンクリートという名のもと水に浮くほど軽いです。
原料は硅石・セメント・生石灰で発泡剤アルミ粉末と安定剤、水を混合して高温高圧蒸気養生という製法でつくられ密度が低い分、通常のコンクリートとはメリットもデメリットも併せて相反する部分があります。
熱伝導率はコンクリートの約1/10の断熱性能や耐火性能に優れる反面、外部からの衝撃にもろく欠けやすく、水分を吸収するとさらにそれが顕著になります。欠損やクラックを防止するためにもサイディングやモルタルなどの外壁より塗装の役割が強いという理由の一つです。
いずれも欠損や爆裂などの補修については、ポリマーセメントや各種モルタルのほか各ALCメーカーが出しているサンモルCやシポパウダーまたはクリオン パウダーなどのALCパネル専用プレミックス補修材で処理します。
塗装については補修跡が残らないように、補修部周りとの模様を統一させるために骨材の吹き付けや砂骨ローラーを用いぼかしてから塗装をします。
段違いの施工(ALCパネル建て付けミス)
最近では知名度が全国的になりおろそかな施工はできないのか、以前は施工不足によるミスが多かったようで、私たちが工事した建物においても、驚くようなパネルの組み方に出会ったこともあります。
本来ALCパネルは一枚一枚段差のない、まっすぐな平面でなければいけないのですが、その一枚一枚が数センチの段違いで貼られていました。
30年ほど前に新築した当時の職人さんは、不慣れな外国の職人さんが来ていたということもあって、お客さん自身も不安だったということらしいです。
ALCは新築時のその施工の順番からも構造上交換は事実上不可能です。鉄骨の上から1枚1枚端から順々にパネルが貼られていき、パネルの間には鉄筋が立てられモルタルが流し込まれます。
もし交換するならば、パネルを壊して溶接で止めている鉄骨部分も露出させるために、内装まですべて壊してパネルを外す必要があります。
たとえ壊して外したとしても、パネルとパネルの間に鉄筋を入れてモルタルを流し込む必要があるのですが、新築時に順々に組み立てられているからこそ、それができるのであって真ん中にあるパネルの交換は不可能です。
交換ができない以上、段違いで貼られてしまったパネルとパネルの隙間は、シール等でまかなうしかなくなりますが、通常より肉厚のシール施工で対応します。
ALCパネルのデザイン
平版
平板のALCコンクリートです。新築以降の塗り替えとしては、築年数的に3階建て以上のビルやマンションなどによく使われています。
模様がなくすっきりしているため効率の良い塗装が可能です。
化粧(意匠)パネル
ALCを取り扱う各ハウスメーカーではデザイン性を重視しているため、意匠性のある外壁も多く様々なタイプの柄模様があります。タイル調、レンガ調、ブロック調などがあり、さらにそこから枝分かれした細かいデザインのパネルがいくつもあります。
シール補修
築年数が経過してくるとALCパネルの目地や開口部のシーリングがひび割れて劣化してくるためシール専門職人によりシール施工をしてから塗装に入ります
ロッキング構法で建てられたALCの場合は建物の挙動をより吸収する作りになっているため目地シールの補修はとても重要です。
シーリングの上の塗膜が劣化してひび割れてくると、その下にあるシーリングも劣化してきます。劣化したシーリングを塗膜ごとカッター等で撤去してシーリング材を充填していきます。
シールの上から塗装をする場合の材料は2液成分形のノンブリードタイプのウレタンシーリングが塗料との密着性を考えると、後々の剥離の心配も少なく一番良いですが、非塗装の場合は紫外線にも強い変性シリコンを使用しています。
目地
施工の基本は撤去打ち替えです。古く劣化したシール材をカッター等で除去します。
ALCの場合は液体の吸収率が高いのでジョイント断面からの剥離を起こさないようにたっぷりとプライマーを塗布し、新しいシーリング材を肉厚に充填し仕上げます。
縦目地
ALCのシーリング施工の場合、数量的にその多くの施工が600mm間隔にある長辺目地です。
ALCパネルは外壁サイデイングと違い厚みがありパネル同士が突き合わせでほぼジョイントしているものがほとんどで、雨水がたやすく内部に侵入してくるような隙間がある作りになっていないため、シーリング材のひび割れが即雨漏りになることは少ないです。
ALCパネル目地の撤去打ち替えの場合は、カッター等でALCパネルを削ってしまわない程度に打ち替えるか、もしくはVカットもしくは増し打ちをします。
ワーキングジョイントとなる縦目地の接着面に関してはムーブメント的に3面より2面接着が理想ですが、ALCの縦目地の場合は新築施工時の際に背面にボンドブレーカー的な目地テープが張ってあるため増し打ちの場合でも2面接着が保たれている状態で維持できます。ただし築年数によりシポレックスなどの場合はそもそも縦目地には隙間はほぼなく3面接着となる場合もあります。
さらに言えば縦目地の場合はシール幅が狭く軽量気泡コンクリートという素材上シールとの密着性が高く旧シールの撤去も困難の場合は増し打ちをします。
シール材の下に耐火目地材が埋め込まれているような目地幅が大きい入隅や出隅のコーナーパネル部分は、地震時の伸縮などの動きも大きい場所のため劣化状況を見ながら挙動に十分対応できるシール施工をしています。
ALC意匠パネル
化粧パネルとも呼ばれますが、壁表面がタイル面のように四角くデザインされ高級感はありますが、シール施工の際はその平面ではない凸凹さがある目地ゆえに、手間がかかるパネルです。シールを注入してヘラで均しきれいに仕上げるためには技術が必要になってきます。
横目地
横目地についてはパネル同士がジョイントしている縦目地とちがい、プレートやスペーサーなどの取り付け金具の厚み分目地幅が大きい分、ひび割れなどからの雨漏りの可能性も縦目地より高くなる傾向があります。
既存のバックアップ材の上から挙動に十分耐えられるよう肉厚にシール施工をしてから塗装に入っています。
サッシ周り
シーリングの劣化ではなく、ドア枠やサッシ枠とのシール剥離によるものも撤去して打ち替えを行います。
サッシ廻りもしくはドア廻りとALCパネルの間には開口補強鋼材との取付けの関係で縦目地より目地幅が広くたっぷりとシールを充填します。
開口部
開口部はパネル両側同士をジョイントしている縦目地とは異なり、パネルの片側断面は下地鋼材取付の厚み分だけ隙間が広くなっている場合が多いです。構造上雨漏り箇所も開口部からのほうが多く、増し打ちでも厚みが確保できる以外は基本撤去打ち換えをしてから塗装に入ります。
欠損補修
欠損や爆裂はパネル角に生じる場合が多く、ロッキング構法の場合、特に挙動エネルギーが集中するようなコーナーや開口部廻り、基礎上部の取付部などはクリアランスを設けるなど欠損の可能性は昔より少なくなっていますがスライド構法のALCは破損や欠損も多いです。
欠けた部分は樹脂モルタルなどで成形して修復します。マンションの資産価値を維持し続けるためには、見た目の問題だけではなく下地からすべて万全な施工が必要です。
ALCパネルの平面は削られることはあっても欠損まではいきませんが、コーナー部分はちょっとした衝撃で割とすぐに欠けてしまいます。
本当に稀ですが、新築の施工時のミスなどによって欠損部分を補修したパネルの使用、もしくは既に表面上にはわからないようなクラックが入って、後で欠落するという可能性もあります。
放置をしておくと雨水を吸って鉄筋が近い場合はさびてしまう可能性もあるので、できるだけ早めに補修をし塗装で防水処理をします。また、ベランダなどかせ出ているドレン周りのシールが劣化の影響で、塩ビ管まわりの補修をすることもあります。
ともに補修方法はやはりプライマーを塗布しエポキシ樹脂モルタル等を使ってコテで成形をします。
爆裂補修
ALCパネル内部は気泡構造のため打診検査では音が吸収されてしまうため調査点検も有効ではないため、目視で詳しく確認し補修個所を見つけていきます。
ALCパネル間の長辺目地部にモルタルを充填する湿式構法によって建てられたALC外壁の建物は、パネル断面のモルタル充填部の口径が大きい分、目地部にあたるALCパネルの小口への衝撃に弱いです。
パネル内部にある鉄筋や取り付け金物が露出している欠損の場合は、防錆を考えてアルカリ性のモルタルで補修をして塗装をします。
パネル内鉄筋の爆裂
縦目地内鉄筋の爆裂補修
モルタル充填部内の鉄筋が錆びて爆裂を起こす場合もある築年数が古いALC建物の補修。
座掘り部金具の爆裂
平面の爆裂補修
内部鉄筋や座掘り部分の取り付け金具による爆裂を補修してから塗装をします。
座堀り部の爆裂補修
乾式のロッキング構法とは異なりスライド工法による建て込みの外壁の場合、躯体側にボルト溶接する際に孔を空けた座掘り補修跡からの爆裂は時々見受けられます。
この孔は新築時のパネル建て込み時にボルトを通す穴で、モルタルで埋めてからプレミックス補修材で埋め戻しをするわけですが、経年劣化の収縮等や建物の挙動で補修材からクラックが入りそこに雨水等が侵入してボルトや丸座金がさびさせて補修材をさらに持ち上げるように爆裂が起きるという現象です。
錆びた部分はよくケレン研磨をしてエポキシ系でも防錆力の強いさび止め塗料を塗布後、モルタルを詰めてからALC補修材というような順番で補修をして塗装をします。
ボルト部の爆裂補修
ALCはパネル断面上部に固定した金物と鉄骨の溶接によって下の階の端から一枚ずつ順番に貼られていき、 窓の上や一番上階のパネルについては、ボルトを貫通させて座金をはめ込み鉄骨に溶接して貼られ建てこんでいきます。
多くの現場では、この新築時にボルト穴を埋めた部分の補修材とパネルの間に隙間が生じたり浮きあがったりして、隙間から雨水が浸入し、ボルトを錆させ爆裂に似た状態を引き起こします。
浮きあがった部分を撤去し、錆を落とし掃除してから錆止めをしてALC補修材もしくはセメントモルタルなどで埋めていきます。
錆落としの際は、ボルト穴が小さいため、さび落としも容易ではないですが、細めのワイヤーブラシでよく錆を落とします。その後、補修周りの塗装の模様に合わせて塗装をしていきます。
開口部爆裂
まれにですが、換気口などが埋め込まれた鉄部のさびの影響で、その周りにALCまで影響をして爆裂を起こすことがあります。
一旦すべて取り外してエポキシ樹脂モルタルなどで補修をします。
クラック補修
ALCパネルは一体型なので、クラックはパネル中央部から発生することはほとんどなく、パネル短辺端部や横目地角や外壁コーナーに集中することが多いです。
クラックの原因
ALCパネルに入ったクラックから、雨水が浸入して中の鉄筋がさびて膨張して爆裂させていました。脆弱部をよく撤去して、クラックだけの場所もUカットをして樹脂モルタルとシール材にて補修をしました。
Uカットシール材充填工法
最近の変性シリコンではブリードを起こすものも多いため、使用する材料にも配慮して施工しています。
また、可能性としては少ないですが、パネル全体に強いゆがみを受けたALCパネルのクラックは内部鉄筋にまで亀裂が及んでいることもなくはありません。ディスクグラインダーを使ってUカットにて補修をします。
シール材
シーリング材は低モジュラスな伸縮性のあるシール材を使う必要があります。加えてALC素材と塗装に対して付着性に優れるシーリング材が適しています。
汚染性では可塑剤が入っていないノンブリードタイプが必須で、2液成分形シーリング材での施工は充分な量のシーリング材が打てるようになり肉厚で耐久性のあるシーリング施工が可能となります。塗装との密着性を考慮してポリウレタンをメインに変性シリコンなどそれ以上のシーリング材で施工しています。
塗装
表面劣化
チョーキングやカビの付着はALC特有のものではありませんが、ALCパネルにはタイル吹付の塗装も多い分チョーキングも多く発生する外壁材です。
リシン吹付の場合はカビが付着しやすく、いずれも高圧洗浄によってしっかり洗い流し下地調整をします。
施工例
塗装職人ではハウスメーカーのALC住宅以外にも工場、マンション、ビルなどのALCも数多くの実績があります。
鉄骨住宅
へーベルなどが代表的です。木造住宅の場合は主に厚さ35・37mmの薄型パネルのため意匠パネルでも模様溝の凹凸深さが浅く比較的塗りやすい外壁です。軽量鉄骨に使われる50mm厚の模様溝が10mmの意匠パネルではやや塗りにくくなりますが、塗り残しのないよう3回塗りを丁寧に行います。
マンションや工場の鉄骨
3階建て以上の集合住宅や工場などは主に100mmの厚形パネルの平板仕様が多く塗装職人でも数多くの施工をしています。125や150mmの意匠パネルも模様に合わせて丁寧に塗装をしています。
一級塗装技能士による施工
塗装職人の代表は一級塗装技能士でもあり、元ALCパネルの建て込み職人で劣化したALC外壁の最適な処置と塗装の知識があります。
合わせて樹脂接着剤施工技能士というクラックや欠損補修の国家資格も持ち合わせているため、ALC特有の劣化症状に対しても自信のある施工が可能です。
付帯部の塗装
ALCは外壁塗装の中でも付帯部が非常に少ない建物ですが、築年数が経過しているヘーベルなどは、パラペットや帯板、雨戸なども多く外壁以上に傷みやすいため念入りに塗装しています。工場やマンションのように3階建て以上のALC建物では付帯部の塗装箇所が極端に少なくなります。
塗料
塗装職人では耐久性を兼ね備えたローラー塗装や多彩模様吹きよる塗装を施工しています。主に日本ペイントやミズタニ製の塗料を使用しています。
ALCは珪石、セメント、生石灰、発泡剤という原料の組み合わせで断熱性能も優れている外壁材のため、断熱や遮熱性能に気を配るよりかは汚れやシールの弾性挙動に影響の少ない塗料を選んで塗装をしています。
価格
ALCやプレキャストコンクリートを扱うハウスメーカーでの外壁塗装の価格は高額になりがちですが、塗装職人では、職人直営であるということと、コンプレッサー等の複雑な機材を使用しないローラー塗装をメインに施工しているため割安かつハウスメーカーより質の良い塗装が可能です。
また鉄骨の場合は木造と比較すると、建物形状がシンプルなものが多くさらに付帯塗装の箇所が少ない分塗り手間が少ないので、面積当たりの単価も比較的に割安となります。