マンションの鉄部では、非常に錆びが進行した外部の階段などを時々見かけます。
サビや腐食などが鉄部に発生すると、脆くなってしまい、安全面にも影響を与えてしまう可能性も高くなります。
鉄部のサビや腐食を予防するには、しっかりとした鉄部塗装が非常に重要です。
残念ながら穴があくほど腐食した鉄部の場合、腐食していない鉄部との塗装を比べると、塗装をしても再度さびが発生する可能性が高くなります。
柱表面などの平滑のような場所では問題は少ないですが、ササラという部分や踏み板や蹴込みといった部分などの接合部の隙間までは十分ケレンをすることができないことがあり、塗装後も錆び汁が発生する場合があります。
錆び汁が激しく予想される場所については雨水の侵入口と思われる部分にシール処理をすることと、できるだけ隙間の中に塗料をしみこませるような形でさびを防止することは可能です。
PS扉などの鉄扉は、チョーキングで塗装をブロックして剥離の原因とならないように、高圧洗浄と下地調整研磨の施工後塗装をします。
玄関ドアおよびドア枠などは入居者さまの不在時は作業ができないため、在宅確認の調整をしながら作業を進めていきます。
いずれも、下塗り塗料、仕上げ塗料は塗料メーカーの希釈率を守った塗料性能を高めた状態で、一級塗装技能士を中心とした職人が施工します。
作業工程
下地調整・サビ落とし
鉄部の塗装は、下地調整というケレン作業が、耐久性を伸ばす点ではもっとも重要です。
鉄扉などはサンドペーパーで、階段などのさび発生の場所には、ワイヤーブラシやワイヤーカップなどを取り付けたディスクサンダーを使用してさびや活膜以外の弱くなった旧塗膜を除去していきます。
下塗り・サビ止め
最も高性能な2液性のエポキシ系の溶剤さび止め塗料を基本に下塗りしていきます。
中塗り
塗料性能を発揮させるため、中塗りをします。
ただし、さびが発生していない鉄部の場合、あまり塗膜を厚くすると鉄部の膨張によって塗膜にひびが入り割れてしまうこともあります。
サビがなく塗膜が活きている場所については、中塗りをせずにを上塗りを厚めに塗装し、さびが発生している鉄は塗料が吸収するため、その分中塗りをさらに多めに重ね塗りするなどによって、鉄部全体の耐久性が伸びます。
本来は2種ケレンなどで旧塗膜を除去しますが、現実の作業現場では、予算が相当額かさんでしまうこともあるため、3種ケレンを行い重ね塗りによって耐久性をカバーします。
上塗り
溶剤にも、一液のものと2液のものがあります。耐久性を考慮するなら2液の溶剤シリコン塗料がおすすめです。
入居者さまへの影響も、大きな面積を塗る外壁の場合は、現在は水性が必須になっていますが、鉄部の場合はやはり溶剤系の塗料がいいでしょう。
塗装職人では、一流塗料メーカー製の「一液ファインシリコンセラUV」もしくは「ファインシリコンフレッシュ」をメインに使用しています。
溶接
穴が開くほど腐食した鉄部には、溶接で補強をした後塗装をします。
亜鉛メッキについて
鉄なのに何年間も錆びない鉄を見かけたことはありませんか?銀色が特色で階段にもよく使われています。
それは亜鉛メッキ加工された鉄です。溶融亜鉛メッキとも言いますが、解けた高温の亜鉛の中に鉄を浸食させたものです。ただの塗装ではないのでとてもさびに強いのです。
マンション新築時のときに元々亜鉛のどぶ付けがされた鉄で組み上げられた階段ならメンテナンスも極端に少なくてすみます。
その反面この亜鉛メッキされた鉄部の場合、数年暴露されている場合でしたらその上から塗装をする場合ほとんど問題ありませんが、よく調査してからでなければ剥離の危険性もあるため施工にもすこし注意が必要です。
また元々通常の塗装がされている鉄の場合には、その上からこの亜鉛メッキ塗装をすることはできません。
亜鉛による塗装はローバルという塗料が有名ですが、亜鉛は鉄と反応して強烈な防さび機能を発揮するため、塗装の上からではなくピカピカした鉄素地から塗らないと意味がないからです。
すべての塗装を除去するためには、サンドブラストなどの特殊なケレン作業が必要で、マンション修繕工事などの場合、現実には困難な施工です。
亜鉛メッキの鉄部への塗装をする場合も含め、事前にご相談いただけたらと思います。
鉄部溶接
マンションの中でも、一番ダメージが早く出てしまうのが階段や手すりなどの鉄部です。
特に重さがかかる鉄部階段に、穴などの腐食が見えるととても不安になるものです。
柱の中から腐食し始めることもあるので、見かけは大したことなくても実際に作業をし始めると、ボロボロと崩れて取れてしまうこともあります。
構造的に大部分を支えているH鋼の腐食は少ないですが、薄い鋼材であるCチャンネルなどは厚みが薄く腐食しやすい部材なので、溶接補強が必要な状況がたびたびあります。
腐食した場所はディスクサンダーでカットして、新しい鋼材を溶接し補強します。
アーク溶接? ガス溶接?
アーク溶接作業者の職人を軸に作業をします。
マンション改修の鉄部補強はアーク溶接がメインでガス溶接は使用しません。
正しい溶接補強
腐食しかかった強度が低下した部分に新しい部材を溶接しても、完全な補強とはなりません。腐食がないガッチリとした鉄に新しい鉄を溶接することで、強度が復元されます。
溶接とは、鉄と鉄を溶接棒によって溶かしてつなぎ合わせる作業です。
腐食して鉄が薄くなった部分に対しては、そもそも溶接しようとしても熱で穴が開くだけで溶接ができません。
弱くなった薄い部分はカットして、その部分は別に用意した鉄を溶接。
鉄は補強する部材の形に合わせるため、工場であらかじめ加工をして現場で溶接します。